89 瘴気汚染されたカラス

 身支度の準備はされており、そのまま瘴気汚染されたカラスがいる地域へ向かう事になった。


 エリーレイドの兄と共にいくことに疑問に感じ、ユウヴィーは聞いてしまった。


「ご一緒に、ですか?」


「現地調査と視察を含め、公務だ」

 ということだった。


(今回、諸外国にも影響があるような鳥の魔物の瘴気汚染だから、そうよね)


 ユウヴィーはどこか一緒に行けたらいいなと思っていた。


 普段、話す機会が少ない事から話せば何か瘴気対策や犠牲魔法を使わずに解決できる手がかりを見つけられるかもしれないと思っていた。

 

 だが、その思いも道中で瘴気汚染された巨大カラスが発見し、討伐しながら進むことになった。


 騎士はライフル銃のような魔法具を使い、魔法を飛ばして撃ち落としていた。攻撃力が低いのか、翼を傷つけるだけであり、飛行を出来なくするだけだった。

 落ちてきた後に、地上で戦うのだが、飛べなくても巨大なカラスのクチバシや足によるひっかき攻撃は驚異だった。


 大きさ約一メートル半はあり、大きいものでは二メートルもあった。


 それが一匹だけではなく、多い時には十数匹で行動していたからだった。


 ユウヴィーもさすがに見ているだけではなく、自身も光の魔法を使って一緒に対応するのだった。


「光の聖女さま! 下がってください!」


 騎士たちから下がれと言われているのに、彼女は今にもクチバシで貫かれそうな騎士を助けたり、後方支援ではなく前衛で戦っていた。


「極ッ! 光の壁!!」


 半透明な光の壁を展開しながら、騎士たちに襲いかかる瘴気汚染されたカラスの攻撃から守る。


 半透明の光の壁に触れた瘴気汚染されたカラスは、触れた箇所から浄化されていくのだった。


「い、いまだ! 続け!!」


 好機と見た騎士たちは畳み掛けるように浄化されたカラスにとどめをさしていくのだった。


「知ってはいたが、君がこれほどの力があるとは……」


 レイバレットが瘴気汚染されたカラスに斬り捨てながら、ユウヴィーに声をかけるのだった。


(軍服っぽいロングコートに太刀ってまじかっけぇぇぇぇ!!)


「あ、ありがとうございます」


 ユウヴィーは、眼福と思いながら礼を言うのだった。


 一行は、瘴気汚染されたカラスを浄化しながら未開の地へと向かっていくのだった。


+


 到着するとそこはひどい有様だった。

 ユウヴィーは昔、自分の領地でも見た事あるような光景だった事を思い出す。その時は狼の群れが大量発生し、怪我人や死者も多く出たのだった。


 それが瘴気汚染をした巨大なカラスとなると木々は枯れ果て、大地も糞害により異臭と瘴気を漂わせていた。


 騎士の人たちがテントなど、駐屯地を形成していたが空からの糞によってガタガタな状態だった。


「くっ、思った以上に――」


 レイバレットが現場の状況の酷さを想像以上のものだったのか口にした。


 ユウヴィーはすぐさま光の魔法を広域展開し、浄化を施していくのだった。


「私は、一帯を浄化しながら回ります! レイバレット様、情報の確認と状況をお願いします!」

 

 ユウヴィーはすぐに救護活動をおこない、瘴気の浄化をしていくのだった。過去、自分が瘴気汚染された狼の群れに対処した事があるため、行動が早かった。


 レイバレットは彼女の行動と思い切りの速さに感心したのだった。


 ユウヴィーは浄化しながら瘴気汚染された鳥の魔物の厄介さを目のあたりにした。糞による瘴気汚染の拡大が想像以上にひどい事がわかったのだった。糞内に含まれている植物の種そのものが瘴気に汚染されており、汚染植物が出来上がっていた。また、川などの水辺にも影響し、汚染区域がじょじょに拡大していく様は、なかなか脅威的だと思ったのだった。

 

 今まで鳥が瘴気に汚染されるといった事例が少なく、勝手に自滅することが多かった。


 ユウヴィーは図書館などで知った内容と大きくかけ離れていた。

 

 今回は繁殖と増殖を繰り返している。なんらかの謎があり、放置しておくことはできないと感じるほどの驚異だった。

 

 一帯を浄化し終えて、騎士の司令官などがいる大きめのテントに向かった。近くまで行くとレイバレットがユウヴィーを迎え入れ、テントの中に入ると誰もが疲れ切った表情をしていた。


 だが、ユウヴィーが光の聖女だと気づくと表情が変化していった。


 誰もが希望に満ちた表情になっていたのだった。


「「「「邪竜殺しの聖女様だ!!」」」


 ユウヴィーの顔は引きつった。


 身分が高い騎士たちは立ち上がり、敬礼し始めたのだった。


 さすがのユウヴィーもどうしてそうなったんだと思うのだった。


「おい、その件は箝口令を敷いたはずだが?」


 レイバレットの冷めた声がテント内に響き、騎士たちは一斉に頭を下げるのだった。


「はは、いえ……だ、大丈夫ですわ……」


「気分を害してしまうと思い、箝口令を出した。此度は私の落ち度だ、すまない」


「い、いえ」


 ユウヴィーは、騎士たちからどう思われているのか正しく認識された瞬間だった。周りにいる騎士たちはどこか士気が高く、どこか全力だった事を思い出していた。


(あれは、私にかっこ悪いところを見せられない騎士の意地だったのね)


 その日は駐屯地で道中の疲れを癒やし、後日体制を整え、瘴気汚染したカラスがやってくる方向を調査する事になった。


 


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