56 聖剣使いの幼馴染は聖龍(人型)
気合が入ったユウヴィーはやる気に満ちていた。光の魔法が身体から無意識に漏れ出すくらいにうっすらと光りながら聖剣使いがいる村に到着した姿は光の聖女そのものだった。
「あんたが光の聖女ユウヴィー様!!」
聖剣使いと一目でわかる純白の鎧を着た赤髪の青年がそこにいた。ユウヴィーはなぜわかったのか、という疑問を顔に出しそうになるが、周りからの接し方からそうなのだろうと思ったのだった。
実際にはうっすらと光ってるからなのだが……。
「オレの名前はマックス、よろしくな!」
「よろしくおねがいします。ユウヴィーと申します」
貧乏貴族とはいえ、貴族なので礼儀正しく挨拶を忘れないユウヴィー。これが自分の料地だったら「よっろしく!」という挨拶になっていた。
挨拶するとマックスの斜め後ろに顔色が悪いというよりも鬼の形相に近い女性が佇んでいた。
「あ、あのそちらの方は……?」
「ああ、聖龍エボラァーション。オレの幼馴染だ」
「よろしく、エボでいいわ。マックスに相応しいかどうか見定めさせてもらうわ。相応しくなかったらシメる」
「え、あ、はい……よ、よろしくおねがいします?」
首をかしげながら引きつりながら笑顔で対応するユウヴィーだった。
うっすらとした光りは消え、通常状態のユウヴィーになっていた。
+
聖教公国の辺境地の村。
村といっても石畳で舗装され、聖教の教会があり、貿易賂の途中にも位置し、宿場町としても機能している所だった。聖教公国の騎士団が常駐し、警戒をしていた。村の高台から見える遠くの森に瘴気がドーム状に渦増して見えていた。
遠目からでもはっきりと小さな村を飲み込むほどの大きさの瘴気の濃さと大きさであり、ユウヴィーは心配になっていた。
(あれ、なんとか出来るかしら……)
来る前までの勢いはなくなり、現実的な対処法があるのか不安になっていたのだった。
「では、状況を聞いていると思いますが改めて説明させて頂きます!」
村の高台に設置された簡易テント内部にマックスの声が響く。
ユウヴィーはマックスの説明を聞きながら、テーブルに置かれた地図を確認した。
「本来、聖龍はこの土地を瘴気から守っていました。光の魔法を扱える龍であったのもあり、瘴気を食い止める事が出来ていたのです。しかし、瘴気の力が強くなり対処できなくなってしまいました」
「そ、聖龍エボラァーションである私は分身。わかってると思うけれど、瘴気のど真ん中で瘴気を抑え込んでいるのは本体よ。本体はもう邪龍と化してて、消滅させないと瘴気をまき散らすだけの存在よ、自我はもうないわ」
「消滅、ですか」
聖龍エボラァーションはマックスの腰につけている大型の十字架を指さした。
「うん? ああ、この聖剣で邪龍を消滅させるんだ」
指をさされた大型の十字架を構えると、光の刃がブォンという音とともに現れた。
「すごい……」
刃は光っているものの、眩しくなく淡くやさしく感じた。
「これで邪龍となった私の本体を突き、内部から光の魔法で浄化をすれば解決よ。本来はなんとか暴れないように抑え込んでいるけれど、時間の問題よ」
「今回の作戦は、オレたち三人があの中心地に向かう、その道中は騎士団が護衛する。体力を温存して、いっきに方をつける流れだ。簡単だろ?」
「騎士団の方々は……」
「盾、となってもらう。そのために存在し、そのために訓練してきたからな……まあ、早めに終わらせればみんな無事さ」
マックスは爽やか笑顔でユウヴィーを安心させようとしていた。その横でユウヴィーの事を瞬きもせずに凝視している存在がいた。聖龍エボラァーションである。
(ううっ、なんかとても怖いなぁ……)
「あの今回の瘴気ってどんな症状なんですか?」
「出血よ。皮膚が黒く腫れて出血し、それが瘴気の霧となって広がっていくわ……」
ユウヴィーのドーム状になってる瘴気の渦を見て、あれがすべてそうなのだと感じ身震いした。
「今は抑え込んでるわ、まだ大丈夫よ」
聖龍エボラァーションは機嫌が悪く、ツンとした態度でユウヴィーに接していた。
マックスの幼馴染は聖龍エボリューション。今は邪龍と化していて、その影響か精神的に安定していないとユウヴィーは思うのだった。元の身体は巣で自分を暴れないように必死に抑え込んでいるのもあり、大変なのだろうと感じていた。
「言っておくけれど、もう私は助からないから、ちゃんとやってよね。わかってる?」
「いや、でも聖女の力があればわからないだろ?」
「マックス、いい? もういい加減覚悟決めて!」
二人は何度も繰り返しているやり取りをしているかのように、喧嘩をしていた。
ユウヴィーは、イベントだとしたらどうやって私がマックスと恋愛して世界を救うんだろうかと考えながら二人のやり取りを見ていた。
(あれもしかして、邪龍と化した聖龍エボリューションを光の魔法で倒しちゃったら、傷心のマックスを慰めて気が付いたらそういう関係になってるような流れ……?)
ユウヴィーはドーム状に渦巻いてる瘴気を再度見て、後ろで喧嘩してる声を聞きながら、引くもヤバイし、向かうもヤバイし、邪龍から聖龍へ戻すしかないと考えるのだった。
(いや、どうやって戻すの……?)
商機の症状を詳しく調べるベストパートナー図書館もなく、ストレス緩和する為の使い魔スナギモはお留守番。ユウヴィーの心臓の鼓動は高まり、かつてない緊張感から冷や汗をかいていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます