52 悪役令嬢のエリーレイドはちゃんと悪役な画策をする!?
「どうしたのマーベちゃん? 何か言いたげね、わかったわ。もう何度目になるのかわからないけれど、不安なのね。大丈夫よ、今回はイイ感じだわ」
しかし、使い魔のマーベラスはそんな言葉を何度も聞いたのもあり、不安だった。不安な方向はこれでこのルート確定してしまった場合のエリーレイドの行く末が半分あった。だが、それを口には出さなかった。残り半分は本当に成功するのだろうか、という不安だった。
「ンンッ! わかったわ。今回、私たちが画策したことを復唱しましょう。それでどういう結果になって、今後どうなるか、改めて予測のすり合わせをしましょう。それで抜け漏れがないかチェックして、懸念点を洗い出し、場合によっては追加で動きましょう」
「我が主、さすがです」
心中を察してくれたわけではないが、謙虚さと慎重さに使い魔のマーベラスは感嘆したのだった。
エリーレイドが口からスッと出た言葉は営業職で居たころによく使っていた使い古されたセリフであり、自然と口にする言葉だった。実際にそれに伴った行動をし、ピンチをチャンスに変えたりしてきたのもあった。その分、過労がたたっていたのだが忘れていた。
エリーレイドは高笑いをした後に、今回の画策した事を流暢に語り始めた。
今回、画策したことはギルドフリーデンのイクシアス第三王子を瘴気対策論文発表会に参加させることだった。これは事前に論文内容を精査する必要があるが、彼自身に学園に入る前に打診したので原作通りに進んだ。もちろん、発表会での視聴者は原作通りに視聴者を内容ではなく当人目当てで埋めさせた。
第三王子で継承権がないが、第一夫人の婚約者はすでにいる。そういった好条件なら、ある程度爵位が高くない人は視聴しに行くため、会場の雰囲気は内容ではなく、彼自身目当ての空気になる。目論見通り、当人は論文を庭園に捨てるほどの感情の揺さぶりをかける事に成功した。
「ここまではいいわね? 何か質問はある?」
「我が主、第三王子の瘴気対策論文発表会の参加は強制力が働かないのですか?」
「いい点ね、働くとは思うわ。でもユウヴィーの使い魔……スナギモの件を考えると心情の変化は忠実に仕向けないとアライン王太子の趣味趣向が変わった事もあるから、念にはッ念をッ入れたのよ」
エリーレイドはアライン王太子からお願いされた出来事を思い出していた。それが二人っきりの時には必ず起き、情緒が揺れていた。
「我が主、説明ありがとうございます」
使い魔のマーベラスの声で正気を取り戻し、説明を続けた。
その後、強制力でユウヴィーが捨てた論文を拾う事になる。庭園に来るのは完全に運だったが、来なかった場合は影魔法を使ってユウヴィーの所に運べばいいと考えていた。だが、実際はうまく行き、無事に彼女がその論文を熟読し、持ち主とコンタクトをとった。イクシアスの婚約者は元から未来の夫をどんな形であれ支えたいという資質があるため、捨てた論文を拾い集める。この行動は予期可能だったので画策は必要はない。
その後、ユウヴィーがイクシアスと本気の瘴気対策の対談をする出会いが起きる。これがフラグを立ったという事になる。その後、ユウヴィーが相変わらず図書館に籠るので旅の一座の情報を匂わせて、イクシアス本人に聞くように仕向けた。
「我が主、ですが――」
「そうよ、本当ならイクシアスと接触するのが先なのに、婚約者と先に接触して、淫靡の痣について知ってしまったのよね」
「我が主、なぜ淫靡の痣について、ユウヴィーに匂わせなかったのですか?」
「他国の事は、その言葉すら越権行為になる可能性があるわ、だから口にできなかったのよ」
ユウヴィーはため息をつき、ボソリとつぶやいた。
「最近、外交関係は領分越権行為として注意されたのよねぇ……はぁ」
注意された割には口をとがらせ、全然不機嫌じゃない態度に使い魔のマーベラスは魚の眼のようになって主であるエリーレイドを見ていた。
「あの婚約者はあとでフォローを入れておきましょう。もうちょっと噛ませっぽくならないと、恋愛は成就しにくいわ。恋っていうのは障害があると燃えるものよ。イクシアスは野獣属性とねっとりとしたテク、甘い声と指による――」
エリーレイドは没頭連動型VR拡張パックの事を思い出しながら成人向けの「こと」を思い出し語っていた。使い魔のマーベラスは魚の眼のまま、聞いているようで聞いていなかった。
(どうして、人間同士の生殖行為は多種多様なんだろう……)
使い魔のマーベラスは人の感情だけは対策できない事をしみじみと感じながら、主の画策した事を聞いて抜け漏れがないことを感じ、安心感が少なからず芽生えたのだった。
「あ、そうだ。瘴気感染者は、個別面談をして事態の収束は光の魔法使いがいるのできっと助けになってくれるとケアしなきゃいけないわ」
「我が主、さすがです!」
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