第37話 エピローグ1

~エピローグ~


「糸原先生、勉強教えてください」


「いい加減ふざけないで仕事しろ」


水流が宿題を持って糸原に歩み寄ってくる。探偵事務所は今日も平和な一日を送っていた。


「そういえば夜岡さんの探偵試験の結果はどうなったの?」


水流が夜岡と組んだのは、夜岡が1人で調査を出来るかどうかのテストをするためだった。夜岡が、糸原を知らずに行動していたのはそのためだった。


「まぁギリギリ合格っていう結論。今日も調査に行ってるよ」


「意外に水流は優しいんだな」


「まぁ。チャップチュッパ調達専用員として働いてもらっても良かったんだけどね」


探偵事務所には一室チャップチュッパの部屋が出来ている。石崎徹から初期費用として受け取った100万が全てチャップチュッパに変わった。


ここでは依頼する人ごとにランクがあり、探偵レベルよって金額が異なる。ちなみに糸原や水流は一番高い位置にいる。そのため、糸原や水流に仕事が来ることは少ない。


「面白い依頼なんて滅多に来ないんだからさ、先生続ければ良かったのに」


「それは」


校長や金森が逮捕されたあとの学校について触れる。報道陣などによってニュースにもなり、副校長による謝罪会見が行われた。教育学会に警察の調査が本格的に行われることとなった。


副校長や生徒から戻ってきて欲しいと言われたが糸原は断った。


「それは、笑顔を作るのが大変だから」


水流は首をかしげた。


「いつもニコニコしていることがどれほど辛いか分かったから」


水流はポケットの中からチャップチュッパを取り出すと糸原に渡した。


「あげる。新発売のやつ」


「あ、ありがとう」


糸原はチャップチュッパの包み紙を開けて口に入れる。


「って不味っ!」


「あははははは」


水流は糸原の顔を見て笑った。糸原は直ぐに吐き捨てる。包み紙を見る。チャップチュッパ、ゴム味。


「よくもやったな」


糸原は水流を追いかける。水流は笑いながら逃げていく。追いかける糸原の表情も笑顔になる。


「糸原、それだよそれ。その笑顔」


「えっ?」


「笑顔って作るものじゃないと思うんだよね。確かに世の中ビジネススマイルとかあるよ。けど笑顔って、本当に楽しい時とか嬉しい時とかにするものだと思う。だから笑顔をしたとかするじゃなくて笑顔は自然なんだよ」


水流はポケットの中からチャップチュッパをもうひとつ取り出す。それを糸原に渡した。


味を確認する。普通のコーラ味だった。


「水流に教えられるなんて驚いたよ」


「見た目は子どもでも、糸原より知能は高いからね。じゃ僕は教育学会の裏金の調査に行ってくる」


水流は探偵事務所を出ていくためにエレベーターに向かう。またしばらく会えなくなる。水流は振り返って最後に言った。


「糸原、分かってるよね。【急いだ方がいい】」


「知ってる」


「ならよかった」


こうして、糸原と水流は別れた。

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