第26話 ハナカイドウ
生徒昇降口が開く数分前。糸原は既に校内にいた。昇降口に置いてある机の上に紙を置く。
3人目の問題児、つまりクラスにいる監視役を見つけるためだった。
糸原を標的とした行動を、糸原自身が動くことで、裏で何かしらの動きがあると考えた。しかし、学校に仕掛けた複数のカメラから怪しい行動をする生徒は見られなかった。
「青木徹也はクラスの誰から盗聴器を渡された?」
青木は、糸原の監視役として手伝われた形になる。香里奈が行方不明になってから突如学校に来た人だ。警戒もするのも無理はない。
「俺は本当に知らない。気付いたら机の中に盗聴器と紙が入ってた。糸原に余計な話をしないこと、常に盗聴器を机に設置しておけって書いてあった」
「嘘はついてないようだな、よし、青木も座れ」
糸原はクラスを見渡す。
「監視役の人に言います。正直に名乗り出なさい。今なら許します」
しかし結果は無言。戸惑いを見せる生徒もいない。水流ほどではないが、観察眼の能力は高い方だと自負している。
「分かりました。では再度伝えておきます。香里奈の居場所は私にも分かりません」
命を狙われる危険もあるが、香里奈が見つかるまではその可能性は低い。
「放課後、石井悠里と青木徹也は職員室へ来ること」
糸原はそして目を一回閉じた。そして、ニコリと笑った。
「それでは今日も一日頑張ろう!」
糸原以外、誰一人として笑っていなかった。
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