第21話 フリージア

少し遡ること。


水流は夜岡に言った。


「明日、南野先生が出張で、体育の授業を糸原先生がやることになっている。おそらく糸原は鍵を机の中にしまうから、その鍵を持って糸原の家に行って欲しい」


「水流さんは、糸原先生が誘拐犯だと思っているんですか?」


「その可能性は低い。だけど、確実に香里奈は糸原の近くで生きている」


根拠が気になるが、水流に根拠など存在しないことが多い。観察眼が恐ろしいほどに当たるだけだ。


「香里奈の行方不明に、糸原が絡んでいるこということでしょうか」


「そういうこと。いい?必ず形跡は残さないでよ。糸原は勘が鋭いから」


水流の指示通り、糸原の机の中を開けると鍵があった。夜岡は、校長先生に挨拶をして職員室を出る。


夜岡は鍵を持って、糸原のマンションへ向かう。水流が次の授業までの休憩時間を引き止めると言ったので休憩時間10+授業2回分の100分を足して110分の猶予がある。


糸原の家には何があるのだろうか。夜岡は初の探偵調査に興奮が止まらなかった。


・・・・


(ここが糸原のアパート…)


夜岡は、糸原の住むアパートに着いた。車を降りて階段を上る。教員にしては質素なところに住んでいるなと思う。


夜岡は指紋をつけないように手袋をつけ、鍵を差し込んだ。上手く回ってドアが開く。


夜岡は慎重にドアを開いていく。


しかし、そこで思いもよらない事態が起こった。


「え、」


遅すぎる後悔。


何が起こったのか。


「ドミノ·····」


ドアを開いたことにより、ドミノが倒れた。その数、数百個。タタタタタと一定のリズムで音が響き、ドミノが倒れていく。唖然として全て倒れるまで見守ってしまった。


(全て計算されていた?)


もしかしたら夜岡が来ることを気づかれていたのかもしれない。南野先生の出張、分かりやすい場所にあった鍵。もしかして水流の作戦が読まれた?


だとすれば、逆に考えると、


(やはり糸原先生には何かがある)


猶予の110分でドミノを戻そうかとも考えたが、無駄なことだろうと察して諦める。


だったらやることはただ一つだった。


(決定的な証拠を掴むのみ)


夜岡はゆっくりと奥へ進んでいった。もしかしたら香里奈がいるかもしれないと期待を寄せた。胸の鼓動が速くなり、止まらない興奮。光が盛れる奥の部屋。


夜岡は部屋を開けた。


そこには·····






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