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前に大学の先生が言っていた話によれば、神保町が本、とりわけ古書の街になったのは付近に学校が多かったかららしい。教科書の取引が盛んになり、その関係で本の店や出版社が立ち並ぶのだとか。
そんなことはこの時間帯になればもうどうでもよく、私たちの用事は飲食店が立ち並ぶ方街としての神保町にあった。カラオケ館もまねきねこも見えるが、今日はとりあえずパスだ。
「ここ、ここの豚骨醤油。細麺なのが少し残念な気もするけど、濃厚なのにアッサリいけるスープがまさにあそこのそれ」
「ふーん? 私は世界一うまいラーメンは我らが地元の誇りだと思ってるからそう簡単には譲らないけどな」
券売機に野口を飲み込ませながらそんなことを口走る彼女。後で泣いたって知らないんだから。いや泣きはしないだろうけど。
さて、十分とか、そこら経ちましたが。
「うっま、やばい思わぬところでトップ争いが始まっちまった」
「でしょ?」
「メンマがしっかりしてるとこんなにも美味いのか……」
「ほらほら、にんにくもあるよ」
「入れるに決まってんだろオラァ!」
ガラわる。生徒会長ブランドが泣いてしまった。可哀想に。
「あ、ごめんさっきのスマホで撮ってたけどストーリー上げても大丈夫?」
「は? ふざけんな。やるなら私の美しさを全面に出しつつこの店が繁盛するようにやれ」
「あいあいさー」
麺が伸びてしまってはもったいないので、投稿はまた後で。私も箸を取り、一口。空腹と疲れに支配された身体では「美味しい」以外の感想はすべて無粋になる。そんな言い訳をして食レポから避けているだけな気もするが、美味しいものは「美味しい」でいいのだ。
「えっごめんライス頼むわ」
「おーおー食べなさい、女の子なんだから」
「食べるわ、女の子だから」
「女の子だからラーメンにはちゃんとライスつけないとダメもんね」
「ほんとほんと」
「あっすいませーん私もライスくださーい」
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