21:07
らりるれろ。さしすせそ。はひふへほ。
「いやあ……あの狭い空間で聴くベースは最高だったな……」
「ほんとにね……はまっちゃうとやめらんないのよね……」
疲れた。口で言うことは本心だが、本当に疲れた。疲れた。疲れた。
「カラオケ……は」
「どーかんがえても無理……」
ライブハウスもこれまたお洒落で、まわりのおじさんがビールを瓶で握っていたりお兄さんがカクテルを飲んでいるのを横目にソフトドリンクをすすっていた私たちが惨めな気がした。シェイカーがおいてあったり何本もお酒の瓶が並ぶカウンターの下から市販の紙パックが出てきた「ああ……」という感情はしばらく忘れないだろう。それでもプラコップに氷と注がれれば、それなりにハイになれた。
膝の裏がなくなってしまった気がする。痛いという領域の向こう側に到達してしまった。どこかに座りたいし、お腹も減った。
「……なんか、晩ごはん、どする……?」
「……言っとくけど私今から作る元気ないからウチはナシね」
「……ラーメン」
「あー、ラーメン……」
言葉というのは不思議なものだ。本当に。私はそれが結構好き。こうやって、単語ひとつで元気が出てきたりするんだから。
「行くよ、神保町」
「美味い店があるの?」
「前にあんたが勧めてくれたところに似てる」
「似てるぅ〜〜〜?」
「だからこそ、食べに行こう」
神保町はそこそこ遠い。どうせ帰りがけではあるが、余計な乗り換えが増える。だからどうした。想いを眼に込める。そして、美形が不敵に笑う。
「最高」
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