クールな部活の後輩が俺の眠ってる間に耳かきしていたのに気づいてしまったことについて

一石二鳥

トラック1 素直じゃない後輩って可愛いよね

「可愛い女の子に耳かきがされたいんだ。

それでさ、耳かきされながら、好きっていっぱい言われたり、赤ちゃん言葉で寝かしつけられたりとか、そういうのめちゃくちゃされたい」

「先輩、早口すぎてなんて言ってるか半分くらいわかんなかったです。で、なんですかきもい先輩」

昼休み、部室にて、俺根元悠、高校2年生

文芸部(部員は俺含め2人のみ)の部長の俺は

部室で唯一の部員である後輩咲々木桜子と飯を食いながら他愛もない会話をしていた。

「なんだその反応、素っ気ないなぁ桜子くん」

「そりゃあお弁当食べてる時に先輩のきっもい妄想聞かされてるんだから素っ気なくもなりますよ」

また素っ気なく返事をした桜子は鞄に弁当箱をしまうと、文庫本を取りだし、読み始める。

「あ、そうだ」

閃いた瞬間、桜子の肩を叩く。怪訝そうな顔で、こちらを振り向く桜子。

「なんですか」

「耳かきやってみない?」

......殴られた。なんかすっごい普通に殴られた。いたっ、えっ頬熱い、え、ひどい。

「え、そんな嫌だったの、普通にショックなんだけど」

「そうやってチラチラこっち見ないでください、読書に集中できないので」

一見素っ気なく見える反応だが、本気で言ってる訳では無いのは分かってる。だが、まあ彼女としても読書を邪魔されたくはないだろう。

「はいはい、じゃあ俺ちょっと寝るから部室出る時に起こしてよ」

桜子の返事を待たずに、イヤホンをつけ、購入していたASMRボイスを開く。そして、部室にある長ぇ椅子に仰向けになり、まぶたを閉じる。

『 素直じゃない後輩のあまあま耳かき』

まさにタイトルの通りである。これを聞いて寝るのが日課となっていて、今ではこのボイスを聞くために寝ているレベルだ。

イヤホンから声が聞こえ、耳かきが始まり、段々と意識が薄れていく。

5分ほど経ち、部室からすぅすぅと寝息が聞こえ始めた。私は先輩に声をかける。

「先輩? もう寝ましたか?」

もちろん、寝ているのだから先輩からの返事はない。

先輩が眠っているのを確認してから私は鞄から綿棒を取り出す。

「し、失礼します」

ゆっくりと先輩のイヤホンをとる。イヤホンの先から、可愛らしい女の子の声や耳かきの音が聞こえてくる。そのイヤホンを耳につけて、先輩の横に座る。

「ん、しょっと」

先輩の耳に綿棒を当てる。

「えっーと、この前やったのは2週間前位だったかな?」

綿棒を耳の外側から段々と近づくように動かす。軟骨に綿棒が当たる。コリコリとした触感に私も少し気持ち良い。

「それじゃあ、耳の奥、行きますね」

綿棒を耳の奥に入れていく。

「あー、やっぱりちょっと汚れてるかなぁ」

事の発端は1ヶ月前、先輩は基本昼休みは部室で昼ご飯食べ終わると寝てしまう。

毎日イヤホンをつけ眠っている先輩がなにを聞いているのか気になったのでこっそり聞いてみたら、まんまとハマってしまったのだ。

ASMRハマったことを先輩に知られるのは少し癪だし、それでまたうるさくなって欲しくないから先輩が寝てる時限定で耳かきをやっているわけだ。

先輩の体がビクッと少しだけ跳ねる。

「気持ちよかったの? ......ふふっ、可愛い」

計10分ほど耳かきをして、綿棒を片付ける。

私が耳かきをした形跡を消して、先輩を起こす。

「先輩、起きてください。もうそろそろ昼休み終わりますよ」

「あ、え、あぁ、うん、おはよ」

普段ならもっと起きるのに時間がかかるはずだが、やけに寝起きが良い。

「あ、やばい、次移動教室だった、じゃ、放課後な」

逃げるように先輩が部室から出ていく。なんか顔が赤かったような......

「!?!?!?」

もしかして、バレた!?

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