完全██編3 勇者の魔力
大量のミントの葉をすり潰したシェフ特製のミント青汁を飲まされている。毎食後に。俺、同じ真緑なら緑茶がいいなあ。
元の世界と同じミントなのかは知らない。ミントっぽさの中に胡椒っぽい匂いもする? うーん。バカ舌だからマジでわからん。これを飲むと口どころか胃の中までスースーするんだよなあ。
ん? ふと気づいた。勇者の第6感が炸裂する。
アリアはミント青汁を、俺とキスするために出させているのでは?
いや、まさか。だが、食事のメニューはアリアが管理してると言ってたし。そうだとすればアリアも意外と可愛いとこがあるな。無言で同じものを飲んでるアリアを遠慮なく眺める。じろじろと。舐めるように。
聖女的なイメージどおりの金髪碧眼の美少女だ。胸もデカい。Fを確実に超えてるぞ。Gはあるんじゃないか? こいつもう聖女じゃなくて性女だろ。
さっき中断させられたせいで、今の俺は思考がピンク気味だった。エロい妄想をさらに加速させていく。アリアを洗脳して、今、ここで従者を前に、跪かせてパイズリさせる。そんな姿を想像していく。
いつになく邪な俺の視線に、アリアはふしぎそうに首をかしげた。優しげでおだやかな微笑み。表情に裏は……、まったく感じられない。さらりと流れる髪が肩にかかっている。初めて会ってから約1ヶ月、すこし髪が伸びたのかもしれない。
なんでもないと言うように少し首を振って、視線を切る。思考が読まれた気配はまったくなかった。読心はされてるのか、されてないのか。なかなか検証が進まない。ため息が出てくる。
アリアの後ろに控えている従者をなんとはなしに観察する。アリア専属の従者。お前か? 褐色の髪のこの女は、常に冷たい感じの表情をしている。俺を見る目が冷たい。その両目の端にホクロがある。名前は、たしかユーノ。魔力はエミの半分くらい。
俺の勝手な仮説だが、この世界の高魔力者は肌や髪の色素が薄い。ホクロも基本ない。それで簡単な見分けがつくんじゃないか? 俺の、腕時計つけてたあたりのホクロ3連星が消えているのは、魔力で回復して消えたんだろ。傷じゃねえのに。
元の世界でも、綺麗な金髪の成人は珍しいものだった。割合も1%かそこら。幼い頃に金髪でも、年をとるごとに髪色がくすんでいく。ハリウッド俳優も染めてるだけだ。根本の色でわかる。
紫外線がいかに人体に影響があるかという話だな。体が紫外線をレジストするために色素を作り始める。白髪? あれは遺伝子のバグだ。
この世界では、高魔力者は魔力で紫外線にレジストしているようだ。色素でレジストする必要がない。魔力がいかに万能かわかる。
あと2日で旅立ちだ。多くの人に会うだろう。魔力量について、勝手にランク付けしようかな。
メイドのミアのような平民は魔力1。ただのゴミか。ってことで魔力F。
夕暮れになると街中にどこからともなくわいてくる冒険者どもは、平民より魔力が数倍高い。魔力2から10ってところか。魔力Eか魔力D。適当だな。
アリア専属メイドのユーノはウラハ家の眷属の家系らしい。貴族の血が混じっており魔力は平民の数十倍。魔力C。街でたまに会う兵士たちもこのくらいだ。
エミは魔力が平民の数百倍はある。貴族の中では並みらしい。魔力B。
アリアの魔力は平民の数千倍、貴族の中でもトップクラスだ。魔力A。
勇者には会うかわからないが、魔力が平民の数万倍ある。魔力S。
DとEの違いをどうしようか考えていたら、アリアがミント青汁を飲み終えていた。静かに従者が出て行き、アリアと2人きりになる。
また、キスをされるのか。そして洗脳が深まる。洗脳は快感だ。従っている間は。俺はすでにアリアを受け入れている。殺意も湧かなくなっていた。頭痛を感じない。今はアリアのキスが、待ち遠しくてたまらなかった。
俺への洗脳はついに完成した。完全洗脳だ。
アリアが席を立ち、座ったままの俺のそばへ歩いてくる。無言。与えられる極上の快楽への期待に胸をおどらせながら、待つ。アリアの瞳を見上げる。潤んだ瞳からかすかに俺への情愛の色を感じる。
アリアの心。恨みつづけて目を逸らしていた、その心を知らなければならない。そんな気がしてきた。
俺から動こう。立ち上がってアリアの腰にそっと左手を添える。ほとんど触れずに。アリアを半歩引き寄せた。顔がもっと近くなる。
顔を見下ろす。華奢な体。魔法で蟻を薙ぎ払う、あの強さと一致しない。か弱い肩。守りたい。アンバランスな聖女。アリアの洗脳も受け入れてしまえば意外と何も起こらないな。アリアに惚れてしまったのか。顔はタイプだからな。
焦れたようで、アリアから唇を押し当ててくる。そっと。ふれるだけのキス。ぷるんとやわらかい。右手で肩を抱いて、もっと強く。あまりの快感に、熱い息が漏れてしまう。この女がほしくてたまらない。
腰に回してた手を徐々に上に這わせていく。胸に届いた。イヤがりもしない。アリアの手は俺の背にまわされたままだ。やわらかい。ずっしりとした重量感。こんなの揉みきれないっ。
下着はやわらかいが、その厚みで突起のありかを隠している。どこをさぐってもわからない。
かりかり、と爪を立てて掻いてみる。かりかりと、すこしずつズラして。ゆっくり、あきらめずにつづけてみる。
意外と当たらないので、今日は感触を楽しむだけにする。下から軽く揉み上げると、圧倒的な存在感が手のひらに感じられる。すご、やわっ。
にゅるんと舌を入れて、アリアの甘い唾液を味わう。びくりとアリアの背中が震えた。
✳︎
俺が読んだ3冊の恋愛心理本すべてに書いてあったのが、ボッサードの法則。物理的な距離と心理的な距離は似るってことだ。
男は近い女に流されるし、遠くの女を忘れてしまう。女もだが。まあ、切りたい相手は遠距離か遠距離風にするといいらしい。
俺はエミと離れない選択をした。異世界での遠距離恋愛は絶対にむりがある。必ず破綻するだろ。エミが他の男に流されるイメージはあまりわかないが、リスクはすくない方がいい。俺にネトラレ趣味はないから。
出発は2日後だ。アリアは準備があって忙しい。今日はエミといるように言い残してどこかに行った。
エミに俺から同行を頼むことにした。
エミは喜んだよ。その無邪気な顔を見ていると、胸のあたりが苦しくてたまらなくなった。息もできないレベル。顔色を見られないために、とりあえずハグした。誤魔化せたはずだ。
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