アリア攻略編4 アリアの魔法講義
いつもどおり、アリアと昼食をとる。蟻退治は中断して屋敷に戻ってだ。森で楽しくピクニックってわけにはいかないしな。
食後は魔法のレクチャーを小1時間受けるのが日課になっている。天気によっては夕方まで続く日もあった。
「強力な魔力を持つ勇者様だけが可能な戦い方があります。自身や武器への魔法の付与です」
「勇者だけ? 魔法の付与がか? そんなことはないだろ」
初耳だった。まだまだ魔法は奥が深いな。
「勇者様、あなたの魔力量を1万とします。10の魔力を込めた火炎剣を放っても、残った9990の魔力が盾となって、あなたの体を守ります」
「すると、魔力20のヤツは魔力10の火炎剣を使うと火傷とかするってことか」
「ええ。理解が早いですね」
「普通だ」
ゲームみたいだしな。
「アリアもできるんだろ」
「はい。勇者様にはかないませんが」
「やめてくれ。多彩な属性の魔法、魔法の発動の速さ、魔力制御の精緻さ。もの凄い努力をしてきたのが俺にでもわかる。アリアはすごいよ」
俺の魔力制御はまだまだクソだ。攻撃されると魔力が制御できずに暴発したりする。火炎剣が当たる瞬間さえ、いつも暴発しているし。
「魔力の量だってスゴいだろう。俺が魔力を感知できるのはアリアだけだ。清らかな湖みたいに澄んだ魔力を感じるよ」
「その、そんなに褒めないでください。照れます」
「本当のことだ」
アリアは素直に嬉しそうだった。顔も赤い。そのうち2人きりで旅する羽目になるし、今から媚びを売っておくことにした。イヤだけど。
「もぅ。魔法に集中してください」
「ずっと念じてるんだけどダメだわ」
「イメージするんです。指の上に、火が灯るのを。魔力を集中させてください」
「ああ」
魔法講義を聞きながら、指の1センチほど上に火の魔法を出す訓練をしていた。だが
ダメだな。昼だけじゃなく夜もいつも練習してるんだがな。アリアのように風の魔法を発動させられるのはいつになるんだろう。
ん?
指先のすこし上に、不意に火が灯った。
「勇者様!」
「やっとできたな」
「すごい! 近距離魔法をもう使えるなんて。聖女でもそんなにすぐできませんよ!」
「アリアの教え方が上手いからだって」
「勇者様の才能はすさまじいです!」
アリアがいつになく興奮している。手を握りしめてきた。まだなんか言ってるが、さすがに大げさすぎる。
心から喜んでるように見える。どうせ油断させるための手だろう。
そう思っても、心が浮き立つのを止められなかった。
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