エミ攻略編5 メイドのミア
────エミの場合────
「なんで俺達閉じ込められてるんだ?」
「なんでだろうね。そんなことより、ねえ。おもしろい話して?」
「あと、俺も魔法使ってみたい。魔力って何?」
「なんだろうね。それよりさー。はやくー」
ずっと一緒にいて仲は悪くなかったはずだが、エミは意外と口が固かった。
────アリアの場合────
「俺も魔法を使えるのか?」
「まず、剣を使えるようになってください。魔王との戦いでは前衛として私の前に立っていただきますので」
アリアの方針に疑問を持つことは『アリアに従え』という命令に反する。そのような言動は控える必要があった。
アリアから得られる情報は多いし有用だ。しかし深掘りが難しかった。
◆
この女は口が軽いんじゃないか? そんな予感があった。安くない情報料を払うんだ、噂だけじゃ足りない。ほしい情報をすべて吐かせる。払うのはエミだが。
「改めて自己紹介するか。俺はマコト。俺なら簡単に魔王をブッ殺せるからと、アリアに頼まれて
適当ぶっこいた。日本は国民主権で平等だ。皇族とも平等なんだからウソじゃないということにしよう。どうせ封建制の原始人に天皇象徴制は理解不能だ。
頭を深く下げたまま言う。
「ミアと申します。洗濯などの雑用を担当しております」
「顔上げていいから。何年勤めてるんだ?」
「ええと、……13年目になりました。早いものですね……」
遠い目をしている。年齢は地雷か。あと褒めとくか。言葉は無料だ。
「そうなのか! あまりに可愛らしい人だから新人かと思ったよ」
「いえそんな。ご冗談では」
「その可愛い唇を見ていると正直、魂が
「私、貴方の国に生まれたかったです……」
うーん。男関係も地雷かな。ん?
ミアが
褒めすぎた? 吊り橋効果もあるか? 緊張と緩和。ファーストコンタクトって、たまにハマるよな。めんどくさい。はぁ。
肩を抱いてキスでもしとくか。
元の世界に戻るためなら俺は何だってする。
◆
優柔不断な
「男がいるか知らないが口に出すな。出せば殺す」
ミアは息を呑んだ。1歩近づく。距離は40cm。
俺はオラオラ系ホスト、と
無言のまま左手でミアの肩を
「お前の人生のすべてを俺に捧げろ。なに、悪いようにはしない」
最後に表情をゆるめて、
右手でミアの頬を優しくなでる。すこし髪にもふれた。視線が俺の目、足元とキョロキョロしている。
「目は閉じろ」
右耳に囁いてから、とにかくゆっくりと唇を当てる。優しく。ふれるだけ。
ミアの柔らかい唇の感触が、ほんの少しわかる程度。
これだけ? と思わせる。足りないと思わせたら勝ち確だ。短期決戦でいく。ダメなら次。どうせ魔王討伐で旅立てばこの屋敷の人間すべてと関係が切れる。どうでもよかった。
◆
結果として、ミアは夢見心地な表情で色々教えてくれた。15才から住み込みで働いてるとか。農村出身だとか。
グチだ。そういう情報は要らねー。そう言いたかったが、俺は鋼の精神力で耐えた。
グチの内容から察したところ、従者の中では
仕事のグチは特に多かった。水を吸った服が重い。手荒れがヤバい。上司がシワ1つでガミガミうるさい。洗濯物を抱え過ぎて落としてやり直しになった。どうでもいいグチばかりだ。
だが、聞いてやってるうちに仕事の好きなところもポツポツ話し出した。
洗濯物をシワひとつなく仕上げた時の達成感。乾いた洗濯物のにおい。晴れた日の朝の空気。仕事でヘトヘトになった後のご飯の美味しさ。
傾聴じゃないが、聞いてやるだけで悩みは消えたりするものだ。
「その石鹸で荒れた手も、俺からすると勲章だ。兵士が傷を恥じるか? もっと誇れ」
この異世界がどんな世界なのかの情報が少なすぎる。アリアのフィルターをとおってない情報が必要だった。噂であっても。
「それとさっきの噂、面白かった。今日は遅い。明日改めて礼をしよう」
勇者は女の魔力を吸って殺す。エミは魔力が枯渇し死にかけてる。そんな噂だった。
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