光指す場所
青、蒼、藍、碧、ありとあらゆる『あお』が綯い交ぜになった夜明け前の空の下、私は東の地平を見つめている。視界を遮るものは何もない山脈の尾根、その最も高い場所で日の出を待っている。
空と陸との狭間に白が満ち、溢れた。細い光が生まれる。幾条もの光の筋が乱舞しながら四方に散るのを見届けてから、振り返った。
一段高い場所にある透水晶の中に差し込んだ光が乱反射している。光が透水晶に飛び込む瞬間を見逃した事に未練を感じながらそれでも、胸の中で期待が膨らんでいく。幾度も幾度も光が透水晶の中を行き来し、耀きを増していく。
向こう側が透けて見えるほど透明だった球体は直視できないくらいに色彩の渦を内に抱え込む。目を閉じてさえ眩しいと感じ始めた頃、光が割れた。『硝子の森』の漣に似た音を合図に目を開ければ一条の光が伸びている。まるで行く先を教える羅針のように大地に対し水平に、霞む事なくどこまでもまっすぐに伸びている。青い、澄んだ空を分断する光の筋に暫し心奪われ、やがてその先にある場所が何処かに気付いた。
束の間呼吸が止まる。次に洩れたのは笑みともつかない息。
ただ、これが偶然としても、何かの啓示だとしても私の中で何かが固まったのは確か。
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