星の欠片

 時に闇の中では不可解で奇妙な事象が生じる事がある。長い間日の光が届くことのない、深い闇の中では、時に、例えば闇が形を持つ時がある。

 まるで、闇が生を得たとしか思えないように蟠り、徘徊する。光を喰らい、熱を求める化け物となる。悪意そのものに姿を変える。人が目を逸らし、心の奥底に閉じ込めた恐怖を映し出す鏡となる。あるいは、何処とも知れぬ場所への入り口となるのだという。黒く染まったこちら側とは相容れない世界が広がっているのだという。その意味で、長い間澱みとごった闇は忌むべきものといえるのかもしれない。

 けれど、極稀に闇が違うものを生み出すこともある。それは欠片だ。

 長い夜の闇を貫いて地上に届いた星の光は戻り道を失いその場で凍りつく。純白の熱を持たない光そのものの結晶は酷く澄んでいて且つ脆い。強い光の下では儚く砕けてしまう、闇の中でだけ存在できる耀きの欠片だ。その輝きを包む闇は、どこか優しさをはらんでいる様にも思える。だから、その耀きは人を惹きつけるのかもしれない。だから、人と人の絆を結びつけると言い伝えられるのかもしれない。

 昔と比べ、光が溢れる様になった今、闇の留まっている場所も少なくなったけれど、その分残った闇の濃さは増し、その奇怪さも強まっているのかもしれない。

 なのに、闇をどこか懐かしいものと捉え、完全に拒絶してしまわないのは、世界の一部だと皆が理解しているからなのではないだろうか、と思うのは考えすぎだろうか?

 角燈守に連れられて、星の光の淡い輝きを目にしながらそんなことを思った。

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