纏雷の剣
名付けられたそのままに刃に雷を纏い光を放つ剣がある。昔、剣奴王と呼ばれた剣闘士が手にしていた剣だ。
帝国時代末期、貴族を楽しませる為だけに互いに殺しあう事を強いられた剣闘士と呼ばれる者達がいた。流れ者や帝国にとっての犯罪者がほとんどだったとはいうが、中には自らこの身分を望んだ者もいた。あの時代、最下層に生まれた者が成り上がる為の手段は皆無に等しく、剣闘士は勝ち続ける事さえ出来れば貴族に告ぐ富を手に入れられさえする唯一の手段でもあったからだろう。
今では剣奴王とだけ伝えられる、その男もある日ふらりと現われ自ら剣闘士になったのだと言う。その一撃は文字通り豪放磊落。受けた剣はへし折り、鎧ごと相手を切り伏せ勝利を手にする。時に叩き伏せた相手の傷口は高熱に晒され炙られたように焼け焦げ、そんな時には、決まって男の手にする剣が光を纏っていたと残されている資料に記述される。
それから僅か数年で至極当然のように男は、帝国内で名を知らぬ者はない剣闘士の頂点に立っていた。
それこそが男の望んでいた『時』だったのだろうか。男は剣闘士達を率いて貴族に対し反旗を翻す。雷を纏う剣を旗印に、戦場の只中で勇猛果敢に剣を振るった。帝国そのものが衰退していた事と新革命軍の台頭と言う幾つもの幸運が重なり、僅か数節の内に剣闘士達は自由を手に入れた。それから、幾つかの大きな戦いを経て帝国は終焉を迎え、男は剣を残し姿を消した。
まるで役目は終わったとでも言うように……。
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