白亜の塔

『力』という不可思議な物が、世界には満ちている。空気や水のように世界を巡り、何よりも魔晶石という結晶の形を取って私たちの生活に深く関わっている。結局の所、その本質はいつでも不可思議だ。結晶となる理由も、『力』がこの世界に馴染んだ結果というが実の所よく分かっていないのだから。

 その不可思議を己の手足のように扱う術を持つのが魔術師達である。彼らは、『力』を身体の内に取り込み、この世界の法則に馴染ませ、従わせる。仮に従わせることが出来なければ、取り込んだ『力』は暴走し、体の中で荒れ狂い、時に術者を死に至らしめる。それでも尚に魔術師達は独特の韻を持った言葉を呪とし、『力』の制御の楔とする。


 その魔術師達が集い、いつかまた必要とされる時が来ると技術を学び磨く塔がある。

 神滅戦の後、帝国が成立する以前に作られた滑らかな外壁を持つ白い塔は、威風堂々と流れた時を感じさせることなくある。いや、外壁だけでなく、誰もが叩く事が出来る門を潜れば魔術師を目指す者や魔術師が行き交う内部は光石の輝きに照らされ、何処までも白い。まるで魔術師達の信条‐何者にも依らず、されど何人も見捨てず‐を象徴するかのように。

 そして、望むのならば『力』のあり方とその使い方さえ学ぶことが可能だ。帝国時代でさえ、権力に依る事無く、ただ人の為にあることを貫いた魔術師協会の創設者の意思、そのままに。

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