希望の関

 黄色い砂塵が壁にぶつかり渦を巻いている。まるでこれ以上の砂漠の進行を食い止めるとでもいうようにその縁に沿って横たわるその壁は作られてから経過した時間をそのまま全て受け止めたかのように、日に焼け、雨に打たれ、砂に塗れていた。それでも、揺るぐ事なくそこにあり、人々はその事をどこか誇らしげに語るのだ。


 かつて、人が神に対し反旗を翻した時、最初の戦場となったのは現在大陸の中心に位置する砂漠となっている緑豊かな国だったという。その戦端の結果がどのようなものであったかは、砦の向こう側に広がる砂の大河が何よりも雄弁に物語っている。結果、神々と人との争いは決定的なものとなり大陸各処で小競り合いというには大きすぎる衝突が生じた。その傷痕は大陸の各地に今もなお残っているが、中でも魔術師達が管理するこの関は最初期の戦場となった場所だと言う。それは魔術師や騎士が国や立場を超えて集い、半ば絶望的な戦いに身を投じた最初の場所でもあるという事だ。

 そして、なによりも、最も初めに神を殲滅せしめ希望を示した場所でもある。

 魔術師が神に対する有効な手段を見つけたからとも、神と立場を同じとしながら人の側についた存在が顕われたからともと言われるが。

 ただ、それは確かに一つの事実を指し示す。

 この時より、神と人との争いは『神滅戦』と呼称されるようになったのだという事だ……。

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