間歇虹

 轟。

 大地が震える。

 いよいよか、と熱い期待が更に膨れる。

 答えるようにもう一度大地が震えた。轟くのは咆哮に似た響きだ。地の底深くより、徐々に大きく、そして轟音へと変わる。

 膨れ上がった期待は必ず弾けなくていけない。

 そして、それにはそれ相応の出来事が必要だ。もうすぐそれが起きる。分かっているからこそ期待はより膨らむ。

 と、轟音が最高潮に達し、飛び散った。

 わぁ、と声が幾つも上がる。弾けた熱気が辺りを包む。


 国一つを分断する大亀裂、その最も広い部分から吹き上がる水柱は遥か上空にまでその先端を伸ばす。圧倒的な質量を有する水は飛沫と変わり、陽の光を乱反射させながら眩いばかりの色彩を形作る。

 それは……。

 虹だ。

 亀裂を跨ぎ両岸で繋ぐほどの巨大な虹。密度ゆえか、勢いゆえか確かな実体を有してそこにあった。

 恐る恐る踏み出した足に虹は確かな感触を伝えてくる。立ち止まった私の横を荷馬が急ぎ足で行き過ぎていった。

 交易の要所とされるこの虹は今も昔も変わる事無くここにある。きっとこれからもずっとそうに違いない。そんな事を思い虹を渡る。


 光が最も濃くなるのは、虹の最頂部。吹き上がった飛沫によって空気が湿り気を帯びた光の結晶となる場所だ。生まれた結晶は、吹いてくる風に揺られるように浮かんでいる。

 その場で体をぐるりと一度回せば、結晶が体に触れる度に砕けた。音もなく、ただ輝きが弾け、砕けた欠片が次々に煌きながら虹の一部になっていく。

 眩しさに目を細めれば、虹の中で無数の光が踊っていた。

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