8話

私の親は子供の時に交通事故で死んだ。その後、親戚に引き取りたが、性格が合わず高校3年の時に義母と口喧嘩をして家を出た。しかし家を出ても行くところも、お金もない。私は途方に暮れ、何とか1番の安いホテルで一夜を過ごした。

次の日の朝、お金がなければ何も出来ないことを痛感した。すぐに帰る家が欲しくなった。嫌々ではあったが仕方なく義両親の家に帰ることにした。重い足取りで帰路についた。歩きながら両親になんと言い訳をするか考えていた。ブツブツと独り言を呟きながら歩いていると、いつの間にか家の近くまで来ていた。心臓の音が大太鼓のようだった。そして家の前まで来ると、義母の話し声が聞こえた。私は家の前の塀に隠れた。

「そうそう。やっとあのおじゃま虫がいなくなったのよ〜。食費だの学費だのやたらと払わせやがって。あんなんにただの金食い虫よ。いないやつに学費を払うなんてもったいないから、理由をつけて学校に退学届を届けてきたわ。これで生活費が浮くわ〜。」

義母の話を聞いて私は無意識に走り出していた。もう私の居場所なんてない。味方なんて誰もいない。自然と涙が溢れてきた。しかし悲しんでいる余裕なんてない。寝床もなければ食べ物もない。私は財布から1泊分のホテル代をかき集めた。そして、昨夜泊まったホテルでまた一夜を過ごした。部屋に入るとすぐに仕事を探した。好条件なんて求めてない。とにかく生活できるぐらいの給料さえ手に入ればいい。今は理想なんて求めている場合ではなかった。一晩中スマホを睨みつけた。しかし、中卒で身元も分からないやつを雇う職場なんてほとんどない。私はひたすら電話をかけ続けた。そしてやっとの思いで見つけた職場はやはり夜の街の仕事であった。やりたいはずがない。しかし、生きるためだった。さらにそこの店は住み込みでもいいと言ってくれたのだ。今の私には最高の条件だった。

次の日、その店に行き簡単な面接を受けてすぐに仕事を始めた。最初こそ辛くはなかった。男の人の話にヘラヘラと笑っているだけでお金を貰える。これまでに比べたら、よっぽど楽だった。しかし何日、何週間と過ぎていくごとに不信感を抱いていった。時に休みなく一日中働くこともあるのに給料が安すぎる。住み込みという言葉で濁されていたが、明らかにサービス残業であった。さらに中卒であることを他の同僚や先輩に知られるとあからさまに距離を取られるようになり、陰口も叩かれるようになった。私の心身は徐々に蝕まれていった。しかし辞めればまた居場所を失う。それだけは嫌だった。私は死にものぐるいで働いた。そのせいか、私は日に日に精神を病んでいった。


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