6話
「さっきの話を聞くと、あなたは寝ることで走馬灯を見れるようです。なので、もう一度寝てみましょうか。」
そう言って三川は私を交番の奥へと連れていった。そして真っ白なシーツの引かれたベットを用意した。
「お客さん用の個室です。ここで少し休んでみてください。私は隣の部屋にいます。なにかあったら呼んでください。」
「わかりました。ありがとうございます。」
私がそう言うと三川は少し笑って部屋を出た。私は早速寝ようとベットにもぐりこみ、天井を見つめ、寝ようとした。
しかし、先程からなにかが心の中でつっかえていて、眠ることが出来なかった。それは三川のことだ。三川は「仕事だからここにいる」といった。しかし仕事とはいえ、あまりにも私に対する感情移入が激しすぎると思ったのだ。記憶がないと知った時は絶望的な顔をして、夢のことを話したなら今度は自分の事のように喜んでみせた。なにか怪しい。まるで何かを隠しているかのように見えた。
だが今はそんなことより記憶を戻すのが優先だと考え、ゆっくりと目をつむった。そして気がつくと私は深い眠りに着いていた。
…………………………………………………………私はゆっくりと目を開けた。目の前には光のトンネルが広がっている。そしてその奥には前の夢と同じの見た事のない1人の少年がいた。
「待って!待って!」
私は叫んだ。しかし少年は見向きもしない。私は走った。しかしいくら走っても追いつくことは出来なかった。
「お願い!待って!話だけでも聞いて!」
少年たちは変わらず光の方へ歩いていく。私は何もすることの出来ない絶望感に砕かれそうであった。しかしせっかくの機会を逃す訳にはいかない。私は肺が痛くなるほど叫んだ。
「待って!お願いだから!待って、待って…待っ……て…………。」
………………………………………………………お…い…おい!大丈夫か!?
私は勢いよく起き上がると、無意識に胸を抑えた。上手く息ができない。喉に石が詰まっているようだった。喋ることが出来ないほどの酷い過呼吸だ。
「大丈夫ですか!?」
三川さんがなにか叫んでいる。しかしその時の私には何も聞こえなかった。そして走馬灯のような映像が頭に写った…。そして私の目の前は真っ暗になった。
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