5話
2人の間には沈黙が続いた。
「では…私は何をすれば良いのでしょうか…?」
私の質問に三川は答えなかった。いや、表情から答えられないとわかった。
「大丈夫ですか…。」
私はそう言って肩を叩いた。三川はゆっくりと顔を上げた。
「ごめんなさい。やっぱり何も方法が思いつかなくて…。本当になんの記憶もありませんか?」
「はい…。あ、そういえば…。」
私は臨界に来てから1度寝てしまった時に見た夢のことを思い出した。
「どうしました?」
「前世の記憶とは違うんですけど、さっき小川のほとりで寝てしまった時、夢を見たんですよね。」
「夢?どんな夢ですか?」
「真っ白な光に包まれた場所の奥に1人の子供がいて、少年はゆっくりと奥に進んでいく夢です。」
「なるほど…。その子供に見覚えは?」
「ありません。」
三川は、またしばらく黙り込んだ。そして急に立ち上がったかと思うと、引き出しから1冊の本を取り出した。そしてバラバラと勢いよくページをめくるとあるページを指さしていった。
「夢で見たのはこんな感じの風景じゃないですか?」
私は本を覗き込んだ。そこには1枚の写真がはられており、そこには私の見た景色と下にその景色の名前らしきものが書いてあった。
「なんて読むんですか?」
「これは走馬灯と呼ばれるものです。基本的に走馬灯は自らの身に死が近づいた時に見る、過去の記憶をいいます。過去の記憶から助かる方法を探すらしいんです。しかし時に、自分の精神や肉体に限界が近づいたと悟った時に見る人もいるんです。つまりあなたの体は既に危険を察知しているということになります。ということは、走馬灯をさらに見れば過去のことが何かわかるかもしれません!」
三川は笑いながら言った。三川の笑顔に私も嬉しくなった。しかし、私の胸の中では何かが引っかかっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます