聞きたくなかった、告白
***
「日向君のことが好きです。」
日向君が来るのを待っていたら、家政婦と思われる人に呼ばれた。
「申し訳ございません。連絡が行き違っていたようで、別のお部屋に行くことになりました。」
「いえいえ、大丈夫です。案内してもらえますか。」
家政婦さん(?)の案内で、その部屋に入ったら、こんな言葉を聞かされたのだ。
まるで、狙ったかのようなタイミングで、瀬野は言った。
「そうですか。」
「小学3年生の頃、初めて同じクラスになって、気づいた時には日向君のことが輝いて見えていました。日向君の行動は、周りの人の助けになっていて、他の人が嫌がるような仕事もやっていて、そんな日向君に憧れていました。」
「私から質問があるので、答えてくれませんか。」
日向君は、瀬野のことが嫌いなままだ。おそらく。まともに瀬野の話を聞いていたのだろうか。
作戦が崩れたことなんて、どうでもよくなっていた。
「答えられる範囲ならば、答えます。」
「では、1つ目。あなたのお父様はどなたですか。」
「瀬野幸一です。」
「2つ目。あなたのお母様はどなたですか。」
「瀬野咲乃です。」
質問の意図がよく分からない。藤井君も理解できていないようだった。
「3つ目。瀬野咲乃さんの旧姓は何ですか。」
「谷本です。」
皮肉にも私の母の旧姓と同じだ。恨めしくなる。
「4つ目。瀬野咲乃さんの妹は誰ですか。」
「井野美紀子さんです。」
井野美紀子。私はその人を知っている。
「5つ目。瀬野咲乃さんは井野美紀子さんを嫌っていますか。」
「ええ。妬んでいますよ。今でも。だから谷本家を出ていったのだと母は言っていました。」
「6つ目。あなたは井野美紀子さんの子である井野奈美さんを嫌っていますか。」
「ええ。もちろん。あれだけ親から愚痴られたら誰でも嫌いになるでしょうよ。」
「そうですか。残念です。そんな理由で暴力を振るう人は好きにはなれません。」
嘘。まさか瀬野と私が従姉妹だったなんて。恨みがあったのに隠して最初は仲良くしていただなんて。私の父の仕事の運が悪かったってこと?
というか、なんで日向は知っていたの?私の母はこの事を知っているの?
もう誰のことも信じられなくなりそうだった。
***
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます