いなくなった、人
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「ごめん。奈々子さんのこと、好きにはなれない。少し苦手なんだ。」
奈々子は地獄に落とされたような顔をしている。私も、まさかここまでキッパリと言ってしまうのかと驚いた。
しかし、反応が早かったのは奈々子だった。
「そう…。とても悲しいけれど、ハッキリ自分の意見を言えるところに惹かれてしまったのだものね。貴方のそういう性格、好きよ。」
田島君が驚いている。
「僕のこと、そんな風に思ってくれていたんだね。振った直後で申し訳ないのだけれど、僕の昔話聞いてくれる?」
「ええ。もちろん。」
私はそっとその場を去った。
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私は人生で2回告白の現場を見たことがある。こんなに穏やかなのは経験した事が無いが、1回目は見させられ、もう1回は唐突にやって来た。
***
本日は瀬野の誕生日会だ。個人で行くように、と招待状にはあったが、同じ時間に瀬野の家に着くように約束している。
瀬野の家の近くのバス停が見えたころには、あの人が其処にいた。
「おはよう。いよいよ今日だね。」
「おはよう。誕生日プレゼント持ってきた?」
「もちろん。ボイスレコーダーもあるよ。」
「OK。じゃあ行こうか。」
この1カ月、準備をする中であの人と仲良くなれた。前よりスムーズに話せるようになったし、言葉遣いを多少崩すようになった。思いがけない収穫で、そこに関しては瀬野に感謝している。
ボイスレコーダーは11月22日に買いに行った。何かあった時の為に、当日は家を出てから全員ONにすると決めたので、今の会話は既に録音されている。
「大丈夫。要らない部分は消せるから。」
「何も起こらなければ音声は使わないから。」
とは言われたが、不安なものは不安だ。
瀬野の家に着いた。何回か来たことはあるが豪華な家だ。やっぱり凄いな、羨ましいな、と思う。同時に、本当に計画が上手くいくのか、心配になってきた。
お手伝いさんに誕生日プレゼントを渡し、中に入る。4人分の椅子があり、私と藤井君で1つのテーブル、瀬野と日向君で1つのテーブルになっている。席は既に指定されているが、予想内なので問題ない。むしろ瀬野と私で1つのテーブルになっていたら引く。
私の少し後、藤井君が来た。
「日向君は」
「何処か別の部屋に連れていかれたのだと思います。」
私、日向君、藤井君の順番で家に入ることにしたのに、何故日向君がいないのか。
予想よりも瀬野の行動は早かった。
***
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