行きたくない、パーティー
チャイムが鳴り、皆が動き始める。休み時間が少ないからだ。
教室前廊下なのでそこまで急がなくても良いが、机を運ばなくてはならない。今日は箒だった筈だ。
「今日は誰が箒?」
「じゃあ私やる。」
箒じゃない時は瀬野の機嫌がすこぶる悪くて苦労した。瀬野と同じ班でない時の何と楽だったことか。瀬野は本当に我儘だった。親が甘やかしていたか、厳しすぎたか、どちらだろう。
「じゃあ私も箒やるね。」
「よろしく。他の人は今日は雑巾やってくれる?」
床を掃きながら、小学4年生の時に頼まれて苦労した事を思い出した。瀬野の親の本性も分かってしまった。
***
「私の誕生日はいつでしょうか。」
「12月16日です。」
「今日は何日でしょうか。」
「11月16日です。」
「誕生日パーティーに日向君を招待しなさい。」
「自分で招待したくないのですか?」
「貴方が招待した方が確実に来ると思うの。」
嫌われている事は薄々察しているらしい。意外な発見だった。それでも彼が欲しいのかしら。恋って怖いものなんだね。
「畏まりました。持ち物は何でしょうか。」
「私へのプレゼントと招待状。忘れたら取って置きのお仕置きが待っているから。」
「私も行った方が良いですか?」
「日向君を誘えたら、来ても良いわ。」
上から目線。瀬野の誕生日パーティーに正直行きたくないが、日向君を誘って自分も行くのが一番良いだろう。
「詳しい内容は招待状に書くから。今日は解散。」
翌日。日向君を校庭の隅に連れて行き、昨夜考えた作戦を実行する。
【作戦1:普通に誘う】
「あの…日向君にしか頼めないお願いがあるの。」
「何かあったの?聞かせて欲しいな。」
意外な返答だ。瀬野の事だと思われて拒絶されると予想していた。
「12月16日って空いてる?」
「何曜日?日曜日なら無理だよ。」
「土曜日。」
「じゃあおそらく大丈夫。何かあるの?」
「実は瀬野の誕生日が…」
「誕生日会でも誘いに来たのか。そうか。」
「瀬野に押し付けられたのよ。本当は誘いたくないし行きたくない。分かってくれる?日向君。」
【作戦2:瀬野の愚痴から誕生日プレゼントの準備に話を飛ばす】
「でも、少し意地悪なことをしたいの。」
「確かに絶好のチャンスだね。」
「協力してくれない?」
「最悪の誕生日プレゼントを用意してあげるよ。約束する。」
結構すぐに終わった。だけど日向君の顔は怖い笑顔だった。
「じゃあ次の水曜日に○○駅で会える?」
「いいよ。ICカードいる?」
「一応持って来て欲しい。」
「了解。」
***
あの人はどんな思いであんなことをしたんだろう。
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