味方を知った、昼
あの頃の事を考えていたら、あと3分で提出だと先生が言った。急いで書き上げる。適当に書くしか無かった。書かないよりはマシだろう。
本当にギリギリで間に合った。この後はひたすら配布物をしまう時間だ。
配布物の中に、給食便りがあった。『白身魚のフライ』という文字を見て、クスっと笑ってしまった。本当は大声で笑いたかった。
「あの時の皆の顔が可笑しくて面白くて…もう本当に」
***
今日の給食は白身魚のフライだ。あのソースを意外と気に入っているので、楽しみにしていた。
4時間目が終わり、給食の準備をしていた。と言っても手を洗って座るだけだった。周りを見れば、瀬野が隣にいる。この顔は困っている時の顔だと判断するが、無視した。瀬野を嫌いになっていたからだ。わざわざ自分から話しかけていた自分が馬鹿みたいだ。
そういえば、あの人は同じ班で、隣の席だった。給食では向かいになる。
この学校はバイキング形式だった。給食を取りに行く時、瀬野の顔が歪んだ。魚が嫌いだけど、好きな人に好かれる為に無理矢理作り笑いで食べているのだ。そりゃあ嫌だろうなと、その時の私は気にも止めなかった。
それは給食中の出来事だった。瀬野が先生の所に行き、何か言っていた。正直何故今なのかとは思ったが、そんな事を周りに聞いても分からない筈だと思い、取り敢えず食べていた。
「ごめんね。トイレに行きたくなっちゃって。」
何故「ごめんね」なのか。貴方がいない方がこの班は平和だ。知らないというのは幸せなことだとしか思わなかった。
「再び腹痛が来た。どうしよう。」
「うーん。先生に相談して早退とか?保健室行くでも良いけど、早退の方が良いでしょ?」
「その案採用する。ありがとう。」
帰るのか。ラッキー。私はそう思ったが、罪悪感なんてもう無かった。
瀬野は結局昼休みに帰った。その時、理由が体調不良だと知った皆の罵る声が聞こえた。先生は瀬野を保健室に連れていく為、確実に数分は来ない。
先生がいなくなった瞬間の皆の顔の変わりようが凄まじかった。多分あの顔を一生忘れることはないだろうと、今でも思う。
私は木曜日だったから余りにも嬉しくなってしまった。あの時間に、振替は無いのだ。瀬野は習い事を幾つもやっているから、他の曜日だと駄目なのだ。
でも一番嬉しかったのは、皆が瀬野を嫌っていると分かった事だ。
***
時計を見ると、もうそろそろ学活が終わるみたいだ。今日の掃除場所は廊下だ。
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