第3話 謎の美少女と出会った

「__じ、じぬ゙ぅ…。」


森に迷って早1日。ウキウキで歩き始めた俺は、地べたに這いつくばっていた。


「喉乾いたお腹空いた歩きたくないダルい帰りたい虫がウザいゲームしたい引きこもりたい暑苦しい」


俺はありとあらゆる欲望を口に出した。ああ、早くもホームシックになってきた。

あのクーラーの下のゲーム部屋に戻りたい…。


森ってこんなに広いものなのか…?どこも一緒の風景にしか見えない。

どうしよう、遭難なんてしたことないから、どうしていいか分からない。


俺はこのまま野垂れ死ぬのか…? そんなのは絶対に嫌だ!! 死ぬのにはさすがに若すぎる!神様仏様お母さん助けて!!


そうみっともなく命乞いしていると、ガサガサと茂みからなにか音が聞こえてきた。


なんだ、猪とか熊か…? そんなのここで会ったら死に確じゃん!!無理無理無理俺は逃げる!


もうほとんど残っていない体力を振り絞って逃げると、茂みの中の何者かは俺を追いかけてきた!!

もうロックオンされてるってこと!?


俺は頭の中をフル回転させて、助かる方法を考える。

死んだふりはダメっていうし、罠とかもはれるわけないし…。


__そうだ!


ほぼ機能停止しかけだった知恵を振り絞り、一つの案にたどり着く。それは__


「お願いです!!何でもするから命だけは勘弁してください!!!」


そう言って俺はダイナミック土下座をした。

そう、俺が考えた作戦は命乞いだ。命乞いは俺の得意分野!! これはいける!!


その瞬間、茂みから黒い影がバッと飛び出した! 作戦失敗か!?


少し身構えていると、茂みから現れたのは__


「何、あんた。男なのにみっともないわね。」


なんと、茂みからは赤髪の美少女が現れた!! 服はコスプレのようなもので、アニメのどこかの学校の黒を基調とした制服のようなものを着ている。


なんだ、女の子か……。いや、それならそれで恥ずかしいんですけど。


というか、女子となんかほぼ話したことないし…。どういうテンションでいったらいいか分からない。


「いや、今のはちょっと土下座したくなっただけだよ。あはは。」


「はぁ? そんな気分になるわけないでしょ。十中八九、私をモンスターだと勘違いしただけだと思うけど。」


なんか怒られてる!!どこで対応を間違えた…? あとモンスターってなんだよ。ゲームの話?


っていうか、飢え死にそうなところに人がやっと現れたんだ!! これは道を聞く大チャンスなのでは…?


「あの、俺道分からないから教えて欲しいんだけど…。」


なんか女子を頼るのって情けないけど、死ぬよりはマシだからしょうがないな。


「……はぁ、しょうがないわね。まぁ、ここで死なれたら私も気分が悪いし。」


その美少女はため息をつきながら歩き出した。それに俺も急いでついてゆく。


「なんであなたみたいな弱そうなのがフォグの森に来たわけ? ここ、1度入ったら帰れないで有名でしょ。」


フォグの森…? それがここの名前か?ここ、もしかして日本じゃないとかある…?


確かに、この女子の赤髪がコスプレでなければ日本じゃないかも…。けど、日本語通じてるしな。


「なんか、階段から落ちて気づいたらここにいたんだよ。早く帰ってゲームしたい…。」


お母さんが作ってくれたご飯も、今頃とっくに冷めてるだろうし。

今までの環境がどれだけ有難いか分かったかもしれないな。


「階段から落ちてここにいたってのは面白い冗談ね。それか、頭でも打っておかしくなったのかしら?」


この子、やけに毒舌だな…。見た目が可愛いから相殺されてるけど、中々ここまで毒舌な人はいないぞ。


「もう俺の話はいいや。それより、どうやってこの森を抜けるんだ?」


これ以上俺の話をしててもダメだしされるだけだろうし、話題を変えることにした。


「まぁ、一般的には知られてない方法だけどね。私は何百年もここにいるから分かるの。」


「……はぁ。」


いや、絶対嘘だろ。さすがに分かるわ。厨二病的な何かか?俺も一時期厨二病だったからあんまり人のことは言えないんだけど。


その美少女は人差し指の先を赤い舌でぺろりと舐め、前にかざした。


「意外と単純な仕掛けだけど、風向きで出口がわかるのよ。逆に、違う方向に進むとずっと同じ場所をループし続ける魔法が森全体にかかってる。」


……魔法? 異世界転生してチート無双しました的な世界に来てるわけじゃないんだし、そんなもの存在するわけが__


「__いや、可能性はある!!!」


「…は?何。」


俺が思わず興奮して大声で叫ぶと、怪訝な顔をされたので再び小さく縮こまった。


よくよく考えたら、階段から落ちたってことは死んでるかもしれないということ!!

イコール俺の死後の楽しみである異世界転生とかしちゃってたりして!?


「あー!!もうなんでもっと早く気づかなかったんだろう!!」


「さっきから何。うるさいんですけど。」


前を歩く美少女にジト目で鋭く睨まられる。ドMなら死ぬほど喜んだのだろうが、俺にとっては苦痛でしかないぞ!! 辛い!


それは置いといて、突然だが俺は異世界を信じている!! 異世界にはロマンがあり、野望があり、夢がある。

そして、チート持ちで無双する日本人…。最高ではないか!?


こんなことを言う度に周りからは笑われてたけど、今となってはざまぁみろだ!俺はもしかしなくても異世界転生したかもしれないのだ!!


「あー、早く外の世界が見たい!! 楽しみだなー!!」


「いちいち声がでかいのよ。道なりに歩けばあと15分近くで着くから。」


あと15分で俺の異世界ライフがTheスタートするかもしれない!!

胸のドキドキが止まらないぞ!

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