第4話 チート能力で異世界を無双したい
謎の美少女と森の中を歩くことおよそ15分。
「もうそろそろ着くわよ。けどまだ森の中だから警戒しててね。まぁ、ここはモンスターが滅多に出ない地域だけど。」
「大丈夫大丈夫。その、モンスターはもし出ても俺が倒してあげるからさ!」
というか、俺の方がモンスターに喜んで会いに行きたいくらいだ。
もし俺が本当に異世界転生していると仮定して、ほぼ必ずと言っていいほど異世界転生にチートはついてくるのだ!!
つまり、今の俺は何かしらのチート能力を得ているに違いない!!
モンスターを目の前で倒せばこの子の評価もぐんと上がるに違いないだろう。そしたら、もしかしたら一目惚れされちゃうかもしれないなー。そんなことになったら困るなー。
「鼻の下が伸びてるわよ。気持ち悪い。」
「……すみません。」
さすがに今のは心にぐさっときた。俺、豆腐メンタルなんだから勘弁してよ…。
そんなことを考えていると、突然前を歩いていた美少女が止まった。
「どうしたんだ? やっぱり道分かりませんでしたとか言わないよな?」
だとしたら俺と2人で飢え死ぬことになるから勘弁してほしい。
「つくづくうるさい男ね。そんなのじゃないわ、右奥の方からこちらに向かってきてる音がするの。 足音からして人間でも動物でもないわ。」
それはつまり、モンスターってこと!? ふっふっふ…やっと俺の出番が来たようだ!
異世界転生チート能力パワーを見せてやる!そして無双してやる!!
しばらくすると、俺の耳にものすごい勢いで何かがこちらに向かってきてる音が聞こえてきた。
「…ふっ、お嬢ちゃん。ここは俺に任せな。」
俺は少しカッコつけて前に出た。
「いや、見るからにあなた弱そうだし。ここは私がすぐ片付けるから__」
「女の子にはこんな危ないことはさせれないよ。いいから後ろで見てな。」
そう言うと、美少女は疑うような顔で渋々後ろに下がった。
まぁ、すぐその顔も俺のチート能力を見て驚きに変わるだろうけどな!
そうドヤ顔をした瞬間、木々の隙間からモンスターらしきものが出てきた。
そのモンスターは俺の背の倍以上はある大きな植物の形をしていた。その真ん中にはトゲトゲの歯が無数に生えている口がある。
「これは…マンイーターね。食人植物の中級モンスターよ。素人じゃ危ないから下がって__」
「はあぁぁぁ!!!」
美少女の説明が終わる前に、俺は走り出した! いつもならこんな怪物が現れたらビビって腰を抜かすが、今の俺にはチート能力がついている!! 今ならいける!!
俺はそのままマンイーターと呼ばれていたモンスターの方に走り、殴りかかった!
手応えはしっかりある……というかいっっった!!!
俺は思わず涙目になって手を抱え込んだ。痛い!死ぬ!これは死ねるやつだ!
けど、手応えはあったぞ___
そう思ってちらりと上を見上げると、マンイーターはビクともしないどころか、俺の殴った部分に跡さえついていなかった。
「あれ…? おかしいな、表皮が意外とお堅いですね…?」
顔から血の気がさっと引いていく感じがした。これはチート能力が発動されなかったパターン……?
そのまま棒立ちで手を抑えていると、マンイーターが木1本の太さくらいある触手をこちらに叩きつけようと振り上げた。
……ん??? これってもしかして死ぬやつ__
「何やってんのよ!!馬鹿!」
そう叫ぶ声が聞こえた瞬間、後ろで見ていた赤髪の美少女が高く飛び、俺に攻撃しようとしていたマンイーターの片腕を手刀だけでざっくりと切り落とした。
__ア”ア”ア”アアアァァァァァァ!!!
マンイーターはその凶暴そうな口から高い悲鳴を上げ、再び森の奥に逃げ帰って行った。
「…………。」
俺はアホそうな顔でぽかんとその光景を見守ることしかできなかった。
「ほんと、あんた大馬鹿者よ!! 何めんどくさいことしてるのよ、それなら最初から私に任せなさいよ!」
……はい、その通りです。
俺がこんなに弱いともモンスターがあんなに強いとも、この美少女がそんなに強いとも思ってなかった。
いろいろとショックだな…。
けど、さっきのでここが異世界だと確信した。大きなモンスターに、強い美少女。
つまり、俺には秘められしチート能力が絶対にあるはず!!
そう、さっきはたまたま出なかっただけだ!
「ごめんごめん、なんか、たまたま力が出なかったみたいだ。」
「力? あんたからはそんなものこれっぽっちも感じられないけど。」
……なんだ、力を感じ取れる的な能力か?
詳しく聞かせて欲しい。
「私、その人を見ただけで大体の力量は見て分かるんだけど、あんたからは村人以下の力しか感じ取れないわ。」
…そりゃ、引きこもり野郎だからな!!!
「__まっ、まさか、チート能力がない…? いや、そんなことないよな。うん。」
「確かめたいならギルドで測定してもらうといいわ。それなら数値で分かるから。」
それで本当に何も無かった時が怖いな…。
こんな異世界に普通の俺のまま転生したとしたら、すぐ死ぬような気がする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます