歌しか聞こえないから。

幼馴染みの部屋で勉強会。

第3話 幼馴染みの部屋で勉強する。

「はあぁ…」

「何、鴫野。どうしたの」

「今度のテスト。自信がなくて」

「自信なんてあったことなんてあったっけ？」

「あるよ！…なんて言える自信さえないけど。今回は特にピンチで」

「大丈夫なんじゃない？赤点をとっても補習あるし、補習を受ければ再テスト受けれるんだから」

「でも補習は最後の砦だし。もしそこでまた赤点なんか取ったりしたら…」

「その時は再補習を受けて再再テストを受ければ。でも、それも赤点だったら進級も危ういところでしょうけど」

「はあぁ」

「もうテストを受けなければ？受けても一緒なんだから」

「オレは赤点になることしか考えてないのか樟葉は。樟葉はテストの心配がないから、そんなこと軽々と言えるんだよ」

「それは、ちゃんと勉強してるものねー」

「オレだって！」

「ちゃんと勉強してる？」

「いや、そんなストレートに問いかけてこんといて…」

「じゃあ明日の学校帰りに家で勉強会する？」

「勉強会…ねぇ」

「分からないところがあれば、教えてあげることぐらいなら、できるよ？」

「分からないところっていってもなぁ。分からないところさえ分からないって感じだし。だから、がむしゃらに解いていくって感じ？」

「分からないところは私が見つけてあげるわよ？それなら尚更、勉強会をした方がいいんじゃない？」

「そうだなー。それに教えてもらいながら勉強したら、ひとりで勉強するよりも頭に入るかもしれないし」

「じゃあ明日の学校帰りにね」

「ならどこで勉強会する？オレの部屋？」

「そうね。そうしましょ。それに私も鴫野の部屋に用があるから」

「いや物色する気じゃん！」

「結局、私の部屋で、するのよねー」

「つまらなそうな声を出すなよなー。今回の樟葉は本当に部屋の中を物色しかねない気がするし。しかもオレが居るのに、オレの目の前で」

「鴫野が見ている前で物色するならいいじゃない。合法でしょ」

「もはや人の部屋の中を漁ってる時点で合法とは言えなくない？」

「なによー。私が部屋を物色するより、ベッドの下にエロいのを隠していないか確認する時に、四つん這いの体勢で突き出したお尻を見て欲情している方が犯罪じゃない」

「見ないよ！それに見て欲情しても、欲情するだけじゃ犯罪にならないし！」

「見るつもりだったのね」

「見るつもりもないからね！」

「そんなに、女としての魅力ないのかな、私…」

「ああもう、一体どうすれば！」

「でも、女の子の部屋に来て、ドキドキする？」

「いや、二週間前にも来てるし」

「ドキドキしないの！？」

「いや、まあ、慣れてるっていうか？」

「そんなに、女としての魅力ないのかな、私…」

「えっ？もしかして、オレ、ネタ振りされてる？」

「だって今回は勉強会よ？いつもの遊びに来ている時とは違うシチュエーションじゃない？勉強という口実で男女がひとつの部屋の中で二人きりになるイベントじゃない」

「オレらは頻繁にひとつの部屋の中で二人きりになっているんだけれど」

「しかも、今日は両親はいないの…」

「うん、そうだね。知ってる」

「夜まで、帰ってこないわ…」

「あー、そうなんだ」

「夜まで、この家の中は、鴫野くんと二人きり…」

「なんで名前にくん付け？」

「大きな声を出しても、誰も来ることはないわ…」

「あのー、そろそろ、勉強の方を…」

「完全な密室よ…」

「え、殺人事件でも起きるの？」

「どんな行為に及んでも、どんな物音を立てても、誰も気付かず、迷宮入り…」

「怖いよ！」

「さあ、勉強しましょ？」

「怖いよ！なんか！」