大団円!

 わたしは、自分がミーに支配されかけて、意識がなかった時のことを聞いて、ものすごく申し訳ない気持ちになった。

 セナがわたしに一生懸命声をかけてくれていたのは、聞こえていたけど、急に身体が浮いた感覚がしたとき、ミーがわたしを連れ去っていたようで、その時に突き飛ばされていたのは知らなかった。

 ケガがなくてよかった。

 理人君と伊緒君は、ミーに支配されて狂暴になってしまった観客たちに追い回されていたらしい。

 グラウンドから逃げようとしたところで、突然、観客たちが我に返ってくれたので、その隙に、バルコニーに戻ってきたら、今度はわたしとユウが、落ちていくミーに引っ張られて落下してきて、それを止めようとしたセナがバルコニーから落ちそうになっていたので、大慌てで引っ張って――聞く限り、一番ハードだったのは理人君と伊緒君かも。


「みんな、ごめんね」

「結が謝ることじゃないだろ」

 セナが笑って言う。

 ううん。ちがうんだ。このこともだけど、今までのこと、全部謝らなきゃ。

「今日のこともだけど、今までのこと、全部謝りたいんだ。

 わたし、みんなが大切にしてくれてるの、解ってたのに、何にもないとか言って落ち込んだりして、ごめんなさい」

「結、そんなこと謝る必要ないだろ」

 理人君が、ぽんぽんって、わたしの頭に手を置いてくれた。

 優しいな。

「成瀬さん」

 伊緒君の声がした。顔を上げると、泣きそうな顔の伊緒君が立ってた。

「成瀬さん、ごめんなさい。僕は、羨ましかったんだ。幼馴染ふたりに囲まれて、幸せそうに笑ってる成瀬さんが。

 僕の家は、この島に来るまで引越しが多くて、幼馴染なんていなかったから。

 それに、成瀬さんが僕のことすごいねって言ってくれる度に、素直に受け取れなくて。理人に大切にされて、幼馴染がいるのに、嫌味かよって、勝手にいじけてたんだ、本当に、ごめんなさい」

「伊緒君、わたしこそ、ごめんなさい」

「おい、伊緒、変な言い方すんな!」

 二人で頭を下げ合っていたら、突然理人君が変な声を出したので、わたしは思わず笑ってしまった。

 伊緒君も、セナも笑い出した。

「理人、顔真っ赤じゃ~ん! みんな素直になったんだからさ、理人も素直になったらいいじゃん」

「何がだよ!」

「理人、僕等が素直になれるように、手伝ってあげようか? ねえ、セナ」

「そうそう。理人が言えないなら、ボクと伊緒がイイ感じにセッティングしてあげるよ」

「なんだよ! お前らなんでそんな仲良くなってるんだよ!」

 セナと伊緒君にからかわれて、理人君は耳まで真っ赤になっちゃった。

 ふふ、よかった。四人でこんな風に笑えて、嬉しいな。

「成瀬さん、僕も、結って呼んでいい?」

 伊緒君が、にっこり笑って言った。

「うん! もちろん!」

「ありがとう、結」

 あれ? なんだか理人君がショックを受けたような。でもセナが嬉しそうだし、大丈夫かな?


 と、そこで、ドン! と、大きな音が響いて、続いて歓声がドっと沸いた。

「時間だ!」

 グラウンドの端から、熱狂する人たちの後ろ姿を見た。

 みんなが見てる先には、ユウが言っていた通り、半透明の大きなスクリーンが浮かび上がって、その中で、ミーとユウが、並んで歌を歌っていた。

 そのスクリーンの前には、バリアで作った足場に立って、二人で歌う、ユウとミー。

 スピーカーは、ちゃんとミーが用意していたみたいで、こんな大きな音が出るとは信じられないくらい小さかったけど、二人の両脇にふわふわと浮いている黒い箱。

「すごいな、サンカク星の技術」

「あんな小さな箱からどうやって、こんな大音量を」

 伊緒君とセナが並んで、ライブの歌よりも機材に興味津々な様子で話し始めた。

 理人君が、そっとわたしの隣に立った。

「伊緒が言ったとおり、いい曲だな」

「うん。あの時聞いた、ミーが一人で歌ってた時と同じ曲とは思えないけど、わたしはこっちのアレンジの方がすきだな!」

「結」

「なあに?」

「結が笑顔になって、よかった」

 理人君が、すごく優しい顔で笑ってくれた。わたしは嬉しくなって、また笑った。

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