みんなの手

 不意に、がくん、と力が抜けた。

 ミーが脱力して、落下が始まる。

「ミー!」

 ユウがミーの腕を掴んで、ミーの重力を操作しているようだけど、どうやらうまくいかないみたい。

 わたしも必死にミーの右腕を掴んだ。

「どうしたの、ユウ!」

 ゆるゆると落下していく。

 少しずつ、下に引っ張られる力が増してる気がする。

「ミーがリングをしてるから……! わたしのリングからの干渉を、ミーのリングが拒否してる」

「ええっ?」

「ミー、固有能力を一気に使いすぎたんだ……意識を失ってる! きっと、グラウンドにいた、百人近い人たちのことも、ユイと一緒に支配しようとしたんだよ」

「どうしよう!」

「こ、このまま、できるだけ、ゆっくり降りていくしか……!」

「でも、でも、ちょっとずつ、落下速度上がってない?」

 そうこうしているうちに、校舎が見えてきた。

 わたし達三人は、エレベーターよりは遅いかな? くらいの速度で落下していく。

 不安ではあるけど、怖いというほどの速度じゃない。

 でも。このまま止められずに速度が上がっていくのは不味いかも!

 だって下は中庭で、クッションなんてないもの!


「結ー! ユウ―!」

「セナ!」

 セナの声がした。バルコニーから身を乗り出して、必死にこっちに手を伸ばしている。

「セナー!」

 セナは、必死に腕を伸ばして、ミーの脚にがしっとつかまった。

「危ない!」

 セナがバルコニーから落ちちゃう! と思った直後、わたしたちは勢いよく引っ張られて、バルコニーに転がり込んだ。


「いたた」

「大丈夫か、結! ユウ!」


 理人君の声がした。

 目を開けると、ミーの脚を掴んだセナの後ろで、伊緒君と理人君が尻餅をついていた。

 二人が、セナごとミーを引っ張ってくれたんだ。


「ありがとう……! みんな、ありがとう!」


 助かった!

 

 ミーも、ユウも、わたしも、セナも、みんなみんな、地球は助かったんだ!


 気付いたらわたしは、子供みたいにワンワン泣いていた。

 ユウが、がばっと抱き着いてきて、セナと理人君と伊緒君ごと、泣きわめくわたしをぎゅーっと抱きしめた。

 わたしたち五人は、ぐちゃぐちゃになった。

 ぐちゃぐちゃになって、気付いたらみんな、笑ってた。


「みんな。ありがとう、みんな、大好き!」


 わたしがそう言うと、ユウとセナが、ハグしてくれて、伊緒君と理人君が微笑みかけてくれた。

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