友達百人できるかな

 壁に映し出されている動画がまた変化して、宇宙空間にある地球が映し出された。これ、本物かな、CGかな?

「そんなわけで、アタシは地球にトモダチを作りに来たの。

 トモダチの作りのルールはいくつかある。さっき話した通り、最初に選んだ三人までには、何を話してもいい。でも、四人目から先には連盟のことや、目的については教えちゃダメ。これはアタシの身を守るためのルールなんだって。

 あとは、地球の政治や司法に干渉しないこととか、現地、つまりこの島の法律を守ること……とか、そんな感じ」

「なるほど。確かに宇宙人だって大騒ぎになったりしたら、友達を作るどころじゃなくなりそうだね」

 セナが納得したようにうなずいた。

「友達を作りに来たって、具体的には何人作ればいいんだ?」

 理人君の質問に、ユウはにっこり笑って答える。


「百人だよ!」


「百人?!」

 思わず、わたしとセナと理人君の声が重なった。百人? ほ、本気で? そんな、絵本みたいな目標、達成できるの?

「まあ、一応、アタシはできるまで帰るつもりないから!」

「ええっ! 百人って、数日、ううん、数か月だって無理な規模だよ?」

「何年かかるか解らないぞ」

「じゃあ、ずっといる!」

 驚くわたしたちをしり目に、ユウはこともなげに笑って言った。

 すごいな、ユウ。わたしがユウだったら、他の星に行って、友達百人作るまで帰ってくるななんて課題、絶対受ける勇気がない。海を越えるのだって勇気が足りないのに、宇宙を越えるだなんて、一体どんな決意が必要なのか想像すらつかないよ。

「あっちょっと待って……! ユウ、もしかして、ボク達をサンカク星に招待してくれるって話も、友達百人できたあとかな?」

「あ、うん」

 あ。

 わたしと同じことに気付いたらしい理人君と目が合った。

 これは、セナに火がついちゃったよね?

「よし! ボク、全力で協力するよ! 結も理人も、いいだろ? いいよね!」

「う、うん」

「どうせ有無を言わせる気、ないだろ」

 気圧されながら頷くわたしを見てから、理人君はため息交じりに苦笑いをした。 

「いよっし! こうなったら、まずはウチのクラス、全員友達にしよ!」

 セナがこぶしを握り締めて「おー!」と言いながら振り上げた。

「でもセナ、今は夏休みだよ? どうやってみんなにユウを紹介するの?」

 うちのクラス、SNSのグループとかもないんだよね。スマホ持ってない子も結構いるし。

「地道に一人ひとり、連絡して声かけて紹介するくらいしか、俺は思いつかないけど、効率悪いだろ」

「友達を作るのに、効率がいいの悪いのって、何か違うような」

「うっ」

 わたしの言葉に、理人君がギクッとした。あ、ごめんあの、理人君のこと悪く言ったつもりはなかったんだよ!

「ふふふふふ……」

「セナ?」

 不敵な笑い声がして、セナを見ると、すんごく「悪い笑顔」になってた。うわあ。

「まかせなさい。効率も、情緒も、すべてを解決する完璧な作戦があるのだよ。一つ!」

「セナ、すごい! どんな作戦?」

 ユウが嬉しそうに、両手を挙げてはしゃいだ。

「それはね――」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る