流れ星と運命のトモダチ

 ママが帰ってきて、お姉ちゃんが起きた音がする頃、宿題はひと段落していた。パパが帰ってきて、家族そろって夕飯を食べてすぐ、わたしはセナとの待ち合わせのために家を出た。

 服装は制服じゃなくて、帰ってすぐ着替えたシンプルな半袖のワンピースと、リボンの飾りがついたお気に入りのサンダル。肩から掛けるタイプのスマホケースにスマホを入れてぶら下げた。

 玄関で「気を付けてね。早く帰ってくるのよ」とママに見送られながら、小学校の頃に授業で使った星座早見表をむきだしのまま手に持って、家を出た。

 集合場所は、二人の家のすぐ近く。お互いの家の中間地点にある公園だ。

 わたしたちの家は、坂道の途中にあって、公園はこの坂を上り切った先にある。坂を下った先は海が見える。晴れた日のこの坂道の景色は、お気に入りなんだよね。

 今は夜だから、暗くてちょっと怖いけど。

 そんなことを考えているうちに、公園にたどり着く。

 セナは、まだ着いてないみたいだった。


 ちょっと街灯がまぶしいかも。やっぱり山の上の展望台まで行かないと、セナが思うような星空は見えないのかな。

 

 周囲を見回していたら、ジャングルジムが目についた。

 小さい頃、セナと理人君と、散々上ったジャングルジム。

 ママたち、顔を合わせるたびに、わたしがこのジャングルジムから降りれなくなって泣いて、セナと理人君が助けようとしたって話をするんだよね~。覚えてないんだけど、恥ずかしいんだよ~。

 何となく足元に星座早見表を置いて、ジャングルジムの棒に手をかけて、足をかけて、てっぺんを目指してみたら、あっという間に上り終わってしまった。

 あんなに遠くて高いと思ってたのに、三段くらいのぼったらてっぺんだ。

「よいしょ……っと」

 てっぺんの棒に座って、空を見上げてみた。

 星は綺麗だったけど、やっぱり、街灯が明るくて思ってたほどは見えない。


「あっ!」


 そう思って、目を凝らしていたら、強い光がふたつ、綺麗な曲線を描いて空を流れて行った。


「流れ星っ?」


 生まれて初めて見た!

 心なしか青みがかった光の、すぐ後を追いかけるように、ピンクがかった光が流れて行った。

 あっ、ね、願い事……!


「わ……っ、わたしにも『特別』ができますように……!」


 慌てたせいか、変な言い回しになっちゃったな……こんな意味のわからないお願いじゃ、お星さまも叶えられないよね。


 ハァ……とため息をついた直後、すぐ頭の上から、女の子の声がした。


「見つけた!」


「え?」


 わたしの頭の少し上。こちらをキラキラ輝く、大きな金色の瞳で見ている、大きくカールした、ふわふわもこもこの、ピンクの髪の、褐色の肌の女の子。


「初めまして! アタシの運命のトモダチ!」


 そう叫ぶと、彼女はわたしを思い切り抱きしめた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る