午前6時10分

「ぬ"ぇぁ」


眩しい。

顔いっぱいに光を浴びているらしく、突然覚醒した。

手触りが硬そうな鈍色のカーテンが全開になっている。暑い。

瞬きを繰り返してようやくここがホテルだとわかった。ベッドに横たわっている感触があるが、なんだか妙に体のあちこちが痛い。

もそもそと腕を動かした。


「スマ…ホ……

無い…。」


そう呟いた声はカッスカスだ。

ごろんと寝返りをうつと、備え付けのデジタル時計がぼんやり目に入った。

6時10分。


「朝…だよな。」


朝なのか。窓の外はスッキリ晴れて雲が真っ白だ。

朝らしい。嘘だろう?


どうやって部屋に辿り着いたか覚えていない。


服は昨日のまま。靴もほっぽってある。視界がこれだけ悪いということは、コンタクトはきちんと外したようだ。良かった。

ともあれ本当にスマホを無くしていたらシャレにならない。息を大きく吸い込み起き上がった。

目の前の景色が歪む不快感と頭の重量感に思わず呻く。はい二日酔い。

壁という壁を伝いながらうろうろ歩くと、昨日の犬を思い出した。ずっと吠えられていた。その声から紐づいた記憶を整理しながら部屋中を捜索する。

酔って帰ったにしては、鞄をひっくり返したり脱ぎ散らかしたり、頓狂なことはしておらず部屋がきれいだ。いつもなら破茶滅茶なさまに絶望する朝なのに。

どうにも頭が働かず、昨晩のことも途切れ途切れにしか浮かばない。

誰かと話した気もする。

このままでは埒が明かない。


「ええい!風呂!!」


喉だけでなく、指先にいたるまで全身の水分が足りない。すっきりはっきりさせよう。



スマホは何故か浴室で発見した。

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