君が君であった日々
星見が入部してから、注目されなかった部活に続々と体験入部志望者がやって来るようになった。世間一般的に美少女といえる星見とお近づきになりたいという、全く部活に関係ない考えを持った奴等が多い。
予想はしていたとはいえ、漫画のような展開が現実に、自分の身の周りで起きるとは思いもしなかった。
「今日もお疲れさまですね、ほたる部長?」
「…だれのせいだろうな?」
「おや、なんのことです?」
確信犯だろうに、とぼけた調子で軽口を叩く星見。入部当初から遠慮のない態度をとる彼女は、俺に対して敬う姿勢をとらない。
そんな星見は、生意気などと悪感情を寄越す同性の敵が多く、逆に俺は星見と一緒にいることで男どもに変に絡まれることが多くなった。
「ほたる先輩たちはもう受験生ですよね。」
「目の前で参考書とにらめっこしてる先輩が視界に入るなら、そうだな。」
俺達の部活は天文部。部室は天文台そのものだ。大きな望遠鏡、吹き抜けの屋根、ステンドグラスなど秘密基地のようでかなり気に入っている場所だ。
かなり広めのテーブルは、長らく独りで活動していたため、俺の私物が置かれている。その中には、星見の私物も混じっていた。
「だというのに、入学したての一年生に絡む暇があるのが疑問でならなくて。」
「そーだな、俺も疑問に思う。」
もしかして機嫌が悪いのだろうか。トゲの多い声音に動かしていたペンの手を止める。
「態度が生意気だとか言われましても、あなた方とは関わったこと無いのですが?ほたる先輩が言うならまだしも、あの毛虫を乗せたようなバサバサの睫毛搭載の小さな目で盗み見しておいて、一体何様なんでしょうか。」
「…先輩様なんだろ。」
「私の先輩はほたる先輩だけですが。」
丁寧な口調ではあるが、相当腹に据えかねてるようだ。付け睫を毛虫と称していることから不機嫌さが伺える。
「つーか、遠慮ねーなとは思うけど生意気とは思わないけどな。礼を欠いてる訳でもないし。」
「それは何よりです。あの方たちも私に絡む暇があるのなら、先輩のように近い将来のために備えればいいものを。」
「…お前、俺のことそれなりに敬ってるよな。」
「当然です。先輩ですから。」
答えになってない返答と浮かべた完璧な微笑みは、それ以上に言うことはないと暗に述べていた。
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