第16話華音VS元グリーンベレー(2)

華音に挑発され、睨みつける元グリーンベレーを見て、エレーナはうなった。

「私だって、ルーマニアと東ヨーロッパのグレコの元チャンプ」

「その私から見ても、あの元グリーンベレーの二人の実力は、半端ない」

「怖いくらいに、技が切れるよ」

「技が切れるだけでなくて柔軟性もあるし。スタミナも凄いかな」


シルビアは、華音をじっと見る。

「華音は、何故、二人同時にって言ったのかな」


春香は、華音の気持ちを読んだ。

「ああ、そうか・・・そのほうが、戦いやすいのかな」

「ブラジリアンとボクシングの競技、戦い方の違いもあるのか」


雨宮瞳は、落ち着き払っている。

「華音君は、何も慌てていない」

「心の底で、笑っている感じ、楽な戦いか」

「二人同時って、言ったけれど、挑発の一つで、どっちでもいい、って思っている」


その雨宮瞳に沢田文美は、妬き気味。

「もう、完全に華音君の恋人だね」

「信じ切っているし」


沢田史裕は、少し怖いようだ。

「華音君の自信が、裏目に出なければいいけれど」


「観戦者」たちが、そんな状態の中、道場では試合が始まるようだ。


潮崎師匠が、道場の中央に立ち、華音を呼ぶ。

華音が道場の中央まで来ると、少し考えて、ブラジリアンの元グリーンベレーを手招きで呼んだ。


潮崎師匠

「四の五の言っていてもしょうがない」

「始めるか?」


華音は、道場の床を見た。

「でね、師匠、このフローリングの床、必要です?」


潮崎師匠は、華音の言うことの意味が理解できない。

「外したら危険では?」


華音は首を横に振る。

「相手は殺人のプロ、それと日本の地面はコンクリートだらけ」

「どんな状態でも勝つのが、本物の強者」


華音の言葉で、ブラジリアンの元グリーンベレーの表情が変わった。

「いや・・・コンクリートでタックルとか・・・リスクが高くなるが」

と、一応構えは取っているが、腰が引けている。


華音は、ムッとした顔。

「始めるよ、このチキン野郎!」

その言葉と同時、華音の右ハイキックが、ブラジリアンの元グリーンベレーの左こめかみを直撃している。

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