第9話極秘融資案件の実態

沢田史裕が震えながら語ったことは、以下の通りになる。


・例の極秘融資案件については、現在、融資金額が100億を超えていること。

・融資先は、現与党の幹事長名義であること。

・与党として、借りている可能性も否定できない(沢田史裕としては、そこまでは把握できなかった)

・貸付の形態は、当座貸越。

・貸付の当初の決裁者は、東亜銀行の現頭取。(だから、頭取案件と言われていた)

・沢田史裕が、強く疑問を感じたのは、100億を超えるのに、無担保であること、それと当初の貸出日から、利息支払いが、一度もないこと。


沢田史裕が、そこまで語った時点で、柳生隆が質問。

「その資金が動いた時期は覚えている?」


沢田史裕

「全てが全てそうではないですが、主に総選挙前後、三月の中旬、重要法案の採決の時期」

「そんな手書きのメモが挟んでありました」

「過去の融資担当者のものと、思われます」


松田スタッフが厳しい顔で話す。

「総選挙前は、議員や、関係団体への票取りまとめ依頼に使い」

「総選挙後は、そのお礼を払う、内閣改造の際に、大臣斡旋の派閥からの資金受け入れ」

「三月中旬は、野党対策かな、野党は、与党提出の予算案に反対すればするほど、資金を与党からもらえる、そんな構図、だから反対は銭になるの」

「重要法案の採決でも同じ、強行採決させるまで反対すると、かなりな資金が野党に入る」


柳生隆は冷静な口調。

「銀座支店、おそらく永田町支店にも似たような資金があって、金融庁も知っているので、全く検査対象にはしない」

「下手に指摘をすれば、金融庁職員の命も危ないし、余計なことはしたくない」

「逆に見逃せば、問題なく出世の道が開ける、ということかな」


小島スタッフ

「そもそも、100億以上の融資」

「それが無担保、おそらく無保証でしょう」

「決裁した時点で、特別背任と思う、でも、強い政治家が関与しているから不問」

「少しでも異を唱えたり、余計な動きをしたりすれば、闇に消される」


警視庁の松田明美が、沢田史裕に質問。

「これは警察として聞くけれど」

「沢田さん、襲われるようなことになった、身に覚えはあるの?」


沢田史裕は、また、身体が震えた。

「はい・・・この案件が異常過ぎて、融資部長と支店長に、強く質問をしてしまいました」

「いや、質問と言う以上に、責めてしまったかも」


柳生隆

「その時に支店長と融資部長の反応は?」


沢田文博は、厳しい顔。

「大人の対応と見解を持てと、それに従わないと、何があっても不思議ではないと」

「意味が分からなかったので、納得できません、と支店長室を出ました」


柳生隆は、言い切った。

「おそらく、それが襲われた原因」


華音は腕を組んだ。

「本当の話し合いは、これから」

「どうやって、この問題を解決するのか、ということ」


会議室には、重苦しい雰囲気が漂っている。


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