第8話沢田史裕は、疑惑の融資案件を語り始めた。
別室に移ったのは、沢田史裕、三田華音、柳生隆、松田スタッフ、松田明美、小島スタッフの6人。
その別室で、沢田史裕は職務上知り得た、「疑惑と、その融資実態」を、少しずつ語り始めた。
要約して言えば、
・金融庁の検査が定期的にあるけれど、永田町支店と銀座支店には、何故か融資案件の検査がないこと。
・預金部門に限定した検査で、至極軽微な指摘しか行われないこと。
・その理由について、直属の上司や支店長に問い合わせてみても、無回答、あるいは、「お前が口を出すことではない」と、酷く叱責されたこと。
・金庫内で融資案件のファイルを点検していたところ、他の融資案件のファイルが入ったボックスとは明らかに異なるパスワードが二重に設定されたボックスを発見。
・銀座支店に配属されて約1年疑問に思い続けていたけれど、最近、支店長と融資部長が、そのファイルを開けて、支店内の会議室で密談をしていた。
・壁越しに聞こえたのは、「簿外債権」、「選挙資金」、「野党対策」「頭取案件」の言葉など。
・聞きたくない言葉の連続だったので、自席に戻ろうと思った。
・その自席に戻る途中で、融資部長に呼び出され、「お前が当面、このファイルを管理しろ」と指示された(その時点で、パスワードを知る)
・絶対に部外秘とも厳命された。
ここまで語って、沢田史裕の顔は、また青くなった。
「実に、恐ろしい融資先で」
「融資金額も」
「融資案件そのものが・・・異常」
「融資資金の払い出しの経緯」
「利息の徴収」
「・・・ここから先は・・・」
「頭取の・・・」
沢田史裕は、華音が支えていないと、倒れかねないほど、震えている。
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