第5話沢田家の朝食にて

沢田家が柳生ビルに保護されて、約5時間過ぎ、全員で柳生結衣に案内されたレストランで朝食を採り終えた頃、柳生事務所長の柳生清が、再びのあいさつに来た。

「おはようございます、大変な夜をお過ごしでしたが、今はいかがでしょうか」


沢田康夫は立ち上がって頭を下げる。

「本当に、危険を救っていただいた上に、宿泊の手配、そしてこれほどまでに美味しい朝食を、感謝してもし尽くせません」

沢田悦子も立ちあがり、お礼の言葉。

「素晴らしいお部屋で、本当によく眠れました」

「今後が、どうなるかが不安ですが」

柳生清は、沢田家に頭を下げた。

「当面は、危険が去るまで、用意した部屋を」

「それと、特にお兄さんの史裕さんには、柳生事務所の調査にもご協力いただきたいと」

沢田史裕は頷く。

「わかりました、ただ部屋の中にいても、仕方がない」

「わかっていることは、全てお話します」

沢田文美が柳生清を見た。

「私たちも、実は、感づいていたことがあるので」

柳生清は「ほお・・・」と、頷き、沢田家全員に声をかけた。

「それでは、少し休んでいただき、午前10時から、話し合いを行います」

「案内には、華音君を差し向けますので、ご安心ください」


柳生清が、そこまで言って姿を消すと、再び、柳生結衣が姿を現した。

「深夜で、お疲れの様子でしたので、説明を省かせていただきましたが、柳生ビルの大まかな説明をいたします」

結衣がそこまで言うと、レストランの壁に大きなスクリーンが降りて来た。


スクリーンには、柳生ビルの外観が映っている。

「まず、柳生ビルは永田町の国会近くのビルで20階建てで、外見はレトロな煉瓦模様」

「元々、極秘の施設のため、詳細は省きますが」

「下から教会、全ての宗教で使えるような設備を備えております」

「その上に、柳生薬草研究所、これも柳生一族のプロがおります」

「その上が入院施設、医療所、トレーニングルーム」

「そして、皆さまが。今おられるのが、7階のレストラン、和洋中何でもあります」

「その上に宿泊施設」

「500名客席の柳生ホール」

「書庫は、数千年に渡る歴史書他、蔵書は何十万冊か・・・」

「最上階が、事務フロア、応接になっております」


結衣の説明をあ然として聞いていた沢田文美が、ようやく口を開いた。

「とにかく、すごい・・・としか言えないけれど」

ただ、沢田文美の関心は、柳生ビルより、柳生結衣にあるようだ。

「結衣さん・・・すごくどこかで見たことがあるなあと・・・」


結衣は、クスッと笑う。

「見抜かれました?」


文美の顔がパッと輝いた。

「あの・・・アイドルグループのセンター?紅白に何度も?」


結衣は、沢田家全員に深く頭を下げた。

「もともと、柳生の里出身で」

「今は、特別な任務に就いております」

「このビルに宿泊されるお方は、何かしらの危険の中にあります」

「しっかりとケアをさせていただきます」


文美が頷くと、結衣は話題を変えた。

「それでは、一時ではございますが、一度、お部屋にお戻りください」

「当、柳生事務所が誇るマッサージ師たちが、リラクゼーションの施術をさせていただきますので」


沢田康夫は、また頭を下げた。

「本当に何から何まで」


柳生結衣は。花のような笑顔。

「では、またお部屋にご案内いたします」


沢田家は、再び、部屋に戻り、癒しのマッサージを受けることになった。

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