第10話 へんな護衛
◆レブン視点
「駄目だよ、そんなの!俺が許さない!」
「君の許可は必要ない。決めるのは、賢者様だ」
はあ、何なんだ、この状況?
何であんなにランス君が
何やってんのさ!
「二人とも!
「え、賢者さん?!」
「賢者様!」
ダダッ
「ちょ?!な、どうしたの、二人共?」
わっ、喧嘩していた二人が、急にボクの足元の床に土下座したよ?なんなの、もう。
「賢者さん、ごめんなさい。もう、喧嘩は止めました。だから追い出さないで!」
「賢者様、ご迷惑をお掛けした。静かにするので、護衛の件、考えて貰えないだろうか」
何だろう?二人共、スッゴク目が真剣にボクを見上げて話してくるけど、そんなに小屋の外に出るのが嫌なのかな。何で?
「はぁ、静かにして貰えれば、中に居ても構わない。けど、ランス君はお母さんが心配するから、日が落ちる前に帰る事。ええと……貴方は?」
ランス君は頷いたけど、そう言えば、この兵士の人、名前が分からないよ。
「これは、まだお伝えせず、誠に申し訳ない。私の名前はバルトハルト▪フォン▪ザナドウと申します。バルと……お呼び下さい」
「え、ファミリーネーム持ち?!」
この人、貴族の人か?隣国の?
「あ、いえ、と言う方に
「ああ、分かりました。あの、ボクはレブンと言います。賢者を名乗ってましたが、本当は薬師を目指して勉強している者です」
「薬師のレブン様」
「まだ薬師じゃありません」
「え、賢者様じゃないの?!」
あ、そうか。
ランス君にも言うのは初めてだったよ。あの時はマイリちゃんが居たからなぁ。
「ごめん、ランス君。もう会わないつもりだったからね。賢者って言っておけば、諦めて会いに来ないと思ったんだ。ボクは訳あって人前に正体を晒せない。子供である君達が、ボクの事を村の誰かに話すと思って、本当の事を言えなかったんだ。でも、これだけは信じてほしい。ボクは決して犯罪者で隠れてる訳じゃないんだ」
「お姉さんが犯罪者の訳が有りません!!」
「あ、有り難う?!あの、ボクはお兄さんと………」
ひぇっ?ランス君、なんて剣幕でボクに迫ってくるんだ?!
「だ、だから、その、無実の罪で追われているから、村の大人には、その、内緒にしておいてほしいんだ。いいかな?」
「お姉さんを無実の罪!?酷い奴らです!許さない。お姉さんは俺が必ず守ります!!」
「あ、有り難う。その、お兄さんと……」
「ちょっと宜しいか?」
あ、と、ランス君に気を取られて、この人の事を忘れていたよ。
「はい、何でしょう、ええと……」
「ハルと」
「あ、はい。ハルさん」
「……その、薬師様は、悪者に追われて、ここに隠れ住んでいる、それで宜しいか?」
「う、ははい!?それで宜しいです!あと、まだ薬師じゃないです!」
近い、近い、近い!いや、この人、何でこんなに近づくの?!鼻っ面がぶつかっちゃう!
それとランス君。君は何でハルさんを物凄く睨んでるんだ?
「……やはり駄目だ………」
「はい?」
この人、ジッとボクの顔を見つめて、困った顔をして、今なんと?
「こんな辺境の、森の中に
「はあ……?危険って、何が」
「そうだ、物凄く危険だ!」
ちょっ!?ランス君まで?ハルさんを睨みながらって、ボク、危険物なの???
「兎に角、護衛は確定だ。異存は有りませんな?」
「は、はい!?」
え?ボク、この人に、いつの間に護衛を頼んだっけ??あれ?記憶に無い?
「なら、俺もお姉さんの護衛になる!これは決定だ」
「ランス君!?」
はぁ?!なんでランス君まで護衛に立候補しているの?何がどうなって??って、決定なの?!
「ふっ、君ではこの方を守れない。むしろ、足手まといになるだけだ」
「ふん、なら、足手まといにならないように、あんたが俺に剣を教えろ!」
「……図々しい奴だ」
「あんた程じゃない」
いやいやいや、二人がほとんどオデコが付くか付かないかのところまで近寄って、睨み合ってるんだけど、いったい何が始まるの!?
ニカッ
え?今度は二人で笑い合った?
「いいだろう。但し、弱音は聞かない」
「ああ、望むところだ!」
ガシッ
ああ、二人がガッシリ握手してるよ?
さっき迄のは一体何だったの?
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