第11話 新生活スタート?え?

結局、勝手に二人が話しを進めて、ハルさんが居座る事になり、ランス君が定期的に来て、庭でハルさんと剣術の稽古をするようになっていた。

おまけにマイリちゃんまで通うようになり、ボクの隠とん生活が、騒がしいものになっちゃって困りまくりだ。

でも、特に困ったのは、ハルさんの寝床と、ボクの格好だ。この狭い猟師小屋、寝室とリビングしかない。だから、ハルさんの寝床が問題なんだけど、さすがに正体を晒せないから、一緒の寝室って訳にはいかない。

これにはランス君も、やたら騒いでいたけど、結局、ハルさんがリビングの一画に寝所を作る事でこの騒動は収まった。まあ、ボクの調薬機器を寝室に移動してスペースを作っただけだけどね。


「その、すいませんね、ハルさん。そんなところで休んで貰って」

「ははは、良いところですよ。意外と快適です。気になさらないでください。薬師様」


ハルさんは、ランス君達が持ってきてくれた、厚手のシーツとわらでクッションの様に作り、簡易ベッドを作成した。案外、器用?なのかな。


「ハルさん、ボクはまだ薬師じゃないから。それで話しって何、ランス君?」


ランス君が先日から、話したい事があるって言ってたんだけど、ずっとハルさんの事で、ドタバタしていたから、聞きそびれていたんだよ。今日こそ聞いてやらないとね。


「あ、うん。あのね、今、例の【魔獣避け香】なんだけど、ベナティア村がある領の領主専属薬師様から、レシピの公開を求められてるんだ。なんでも、公共性が高いものだから、薬師ギルドが薬師間に開示して、安定供給を図りたいって事なんだけど、賢者薬師様に確認しようと思って」


薬師ギルドが動いたという事は、評定委員会で薬の効果が認められたという事。なら、それ自体は良い事だし、これで皆が魔獣被害を減らせれば、魔森を切り開いて農地開拓も出来るはず。あとは、ランス君達の生業になればいい。


「構わないよ。特に秘匿するものでもないし、ギルド経由なら皆に行き渡るしね。けどランス君、その専属薬師にランス君達が開発者であるという念書を取らせておく。内容は、皇国公文書書式でボクが書いてげるから、それを持って渡してね。その後、ギルド経由で国に特許申請をするはずだから、その権利はランス君達にある事を認めさせるように念書に書いてあげる。特許の権利があれば、一定期間、開発者に【魔獣避け香】を販売した金額の一部が、入る事になるからね」

「特許?そんなものがあるの?」


「特許は開発者の権利を守るもの。レシピ公開はそれと引き換えじゃないと駄目。だから、念書を取らせる。勿論、領主印の入った物でなければならないから、よくお母さんと相談すればよいよ」

「うん、分かった。でも、本当にいいの?本当の開発者は賢者薬師様だよね?」


「構わないよ、皆が豊かになるのがボクの願いだからね。ところで、さっきから気になってたんだけど、賢者薬師って何?」

「あ、うん。なんか、薬師を目指す人じゃ言いづらいから、その」


はあ、ランス君。勝手にまた変な呼び方始めたよ。その呼び方だと、いろいろとまた誤解を呼びそうだ。ここで言っとかないと!


「はぁ、レブン……いや、レブって呼んで」

「え、賢者薬師レブ様?」


「賢者薬師はいらない。レブだけ。いい?」

「は、はい。じゃ……レブ……さま」


「様もいらないんだけど……まあ、それでいいよ。宜しくね、ランス君」

「……はい、その、レブ様」


うーん、なんでそこで、はにかんで赤くなっているか分からないけど、まあ、良いかな。


「二人で話しているところ、済まない。ちょっとよろしいだろうか?」

「はい?ハルさん、何でしょう」


何だろう?ハルさんが、やけに真剣そうな真顔で、改まって聞いてきた?


「その、差し支えなかったら、そのレシピを私にも教えて貰えないだろうか」

「レシピ?【魔獣避け香】の?」


「そうだ。ちょっといいずらいが、私の故郷が魔獣被害が増えていて困っているんだ。だから、少しでも早くに魔獣被害を無くしたい。もしその【魔獣避け香】が早くに被害地に届いて、その効果で被害が減らせるのであれば、本当に有り難い。勿論、ザナドウでは皇国の特許法に準じた開発者保護法がある。此方と同じように、販売価格の一部を開発者に渡そう」

「そうだ、ハルさんは隣国の兵士だったね。今、隣国は魔獣の被害が拡大しているんだった……いいよ、構わない。ボクの薬が被害を減らせるなら、是非とも使って欲しい。構わないよね、ランス君?」


「構わないです。なら、ハル。材料のボノボ草の採取の仕方、教えるから、明日の朝、早くに森に向かうよ、いいかい」


「オーケーだ、ランス。宜しく頼む」



なら明日は、ランス君とハルさんは、森へボノボ草採取で居ないんだね。


じゃあ、ボクは川で久々の水浴びかな。

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