第1話 魔森の賢者
ぱきっ、ぱりっ
とある森の中、一人のローブをつけた人物が歩いている。ここは人も通わぬ薄暗い森の奥である。彼?彼女?は、どうしてこのようなところに一人で居るのだろうか。
◆◆◆
◆ローブの人物視点
ふう、近くの町にポーションを売りに行ったら、薬師ギルド販売証が必要だって言われたよ。
分かっていた事だけど、ポーション販売は認可制だから、売るのも買うのも、ギルドの販売証明がないと出来なかったんだよね。
薬師ギルドとは、全ての国の薬師が登録し、薬師が作る薬剤、ポーションの性能を国の評定委員会が確認、評価した物に販売証を発行し、販売から流通までを取り仕切っている国の認可団体だ。
粗悪なポーションが出回るのを防ぎ、不当取り引きを防止する為なんだから、良い制度なんだけど、今のボクには厳しい状況かな。
はぁ、本来なら昨年の薬師試験を受験して、今年の春には、晴れて薬師として活躍出来た筈なのに、ボク、こんな所で何をやってるんだろう?
はぁあああ、ため息が止まらないよ。
ああ、やっと我が家が見えてきた。近隣の町から歩いて2時間、結構辛いわ。暫く、町には行かないかな。
ボクは今、猟師が夏の間だけ使う猟師小屋に間借りしている。たまたま駅馬車で一緒になった猟師の爺さんから、金貨五枚で譲って貰ったものだ。国境沿いの魔獣の多く住む森の中にあるんだけど、このエリアは、隣国の魔獣討伐隊が定期的に魔獣を狩っているので、危険な大型魔獣は山奥にしか居ないから、比較的安全なんだ。其でいて、近隣の村や町から離れており、一目を避けるのに打ってつけだ。
ガチャガチャ、ボクは小屋の鎖を外すと、ドアを開けて、そのまま寝室に直行した。はあ、もう足が棒の様だよ、今日は何もする気が起きないわ。ドサッ
ボクは、猟師小屋のドアを半開きのまま、そのままベッドに倒れ込んだ。
むう、さて、どうするか。ボクの全財産は、残り金貨三枚、銀貨五枚、銅貨三十枚だ。住む場所は無料だから食費だけだけど、ボクは薬師の勉強をしていたから、森の食べられる野草や木の実、薬草類は全て判るので、食費も掛からない。ここも住めば都だし、特に問題ないかな。お風呂は無いけど、近くに川があるから、身体を洗う事も出来るし。
ただ、お金は必要なんだ。ボクの目標は隣国に渡って、そこで薬師試験を受ける事。受かりさえすれば、それがそのまま身分証になるから、隣国の国民として認められる。おまけに隣国には薬師ギルドが無いし、そもそも薬師が少ないから、他国の薬師でも大歓迎なんだよね。
だけど一つ、問題がある。
隣国に渡るには、税金として金貨十枚が必要なんだよ。はぁ?だよね。だって高過ぎでしょ!金貨一枚って、平民の家族四人が一ヶ月暮らせる額なんだよ!それを十枚って、ボッタクリもいいとこだよ。そりゃあ、まだ休戦中で平和条約を結んで無いからって理由は分かるけど、休戦してすでに十年経ってるって、官僚達の怠慢でしょ!
それで先ほど、下級ポーションを町の市場に売りに行ったんだけど、皆、取り締まりを怖がって、買って貰えない。
結局、収入を得る道を閉ざされたんだよね。
はあ、そうは言っても、何とか収入を得る方法を探さないと、金貨十枚は厳しいな。
やっぱり、例のポーションを裏で売るしかないか。まだ世に出すのは危険なんだけど、他に方法がない。性能は問題ない。ただ、通常のポーションが薄い緑色に対して、このポーションは赤色、それに性能が強すぎるんだ。
【伝説級】
おそらく、作り出せるのはボクだけだ。そして製法がかなりヤバい。だから作って売るのは、デモ用の一本と、販売用の一本のみ。お金が入ったら、この薬はレシピと共に封印だ。
カタンッ
びくっ!?
い、今、音がした?ドアの方だけど、大丈夫かな??あ、ドアを開けっ放しにした気がする!そうか、そうだよね。こんな森の奥の猟師小屋なんかに人が来る訳な
「お姉さん、大丈夫?」
「わアアアアああぁ?!」
ヒョコッて、今、ドアから顔を出したのは、近くの村の子供でマイリちゃん、七歳だった。また、一人でここまで来たのかな!?
「マイリちゃん、駄目じゃないか!また一人で来たの?って、二度と来ない約束だよね!?」
「だって、お姉さんが心配だったから」
「マイリちゃん、いつも言ってるよね?ボクはお姉さんじゃなくて、お兄さんだって」
「お兄さんはマイリのランスお兄さんだけだよ。レブンお姉さん」
「い、いや、そうじゃなくてって、はあ、マイリちゃんは小さいから判らないけど、ボクみたいなお兄さんも世の中にはいるの。だから、ボクの事はお兄さんと」
「お兄さんは、そんなボインは持ってないよ?村の近所のお姉さんも持ってないけど」
「……………っ、い、いつの間に見た!?」
「あの時、家の近くの川で……お姉さん、妖精なの?」
「妖精?何で妖精?」
「川で洗っていたお姉さん、スッゴク綺麗だった。村や近くの町じゃ、お姉さんみたいに綺麗な人、居ないから。あと、そのボインも持ってる人、居ないよ」
「ボ、ボインって」
「いっぱい、いっぱい、お
「赤ちゃん!?」
ひぃっ、冗談じゃない。
赤ちゃんは、ボクのお嫁さんに作って貰うんであって、ボクが作るんじゃないよ。まして、お
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