第2話 蟹?
ほぼ、同時刻。
街は、突如あらわれた
巨大な多脚兵器による襲撃を受けていた。
二百メーターの巨体を持ちながら
六本の足を器用に駆り
ビルの間を縫い進む無人兵器。
脚部の関節や胴体の軋みが
まるで怪物の呻き声のように響き渡る。
三十分ほど前、夜明けと共に
高空から飛来したこの怪物は、
当初、球体の姿で現れ
下降しながら爆撃を行い
電波を妨害しながら
街のインフラを全て破壊した。
そうして街の中心へ着地した後
怪物は六本の足を生やし
胴体の至るところから
光線やミサイル、機銃を発射し、
街を破壊し続けている。
日曜日の早朝、最初に通信網を
麻痺させられたおかげで
詳細な情報が伝わらず
軍隊の対応は遅れた。
街の警察は応戦を試みたが、
現代の技術力から遥かに逸脱した
巨体な兵器を相手に
まともな対抗手段などあるはずもなく
近づくことすらできないので、
まだ被害に遭っていない地区の
住民を避難させることで精一杯だった。
サイレン、悲鳴
怒号が支配する街の中
ある時
爆発音、砲声、熱光線の高音が
ピタリと止んだ。
それまで等間隔で起こっていた
地面の揺れと、
それに伴う地鳴りも止んだ。
怪物が動きを止めたのだ。
動きを止めた怪物は
胴体上部に二つある複眼状の
複合センサーで
ただ一点を捉えている。
胴体上部から生えた二本の
柱の先についた、丸い眼。
その表面、水玉模様のような
無数の穴の奥にあるレンズが
怪物の視線を表すように
部分的に光を発していた。
その視線の先には、緑髪の少女。
海辺に打ち上げられ目を覚まし、
記憶もなく、重傷の身体を引き摺り、
何よりも、空腹のまま街を彷徨っていた、
先程の、男の声の少女だった。
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