柿葉らいふごーずおん!

@KAKINOHA-S-AKIRA

第1話 浜辺にて。

  街外れの砂浜。

 小さな引き摺った足跡が、

 波打ち際に刻まれている。

 

  時折、血を滲ませながら続く

 それの先には、

 緑髪の少女が立っていた。

 

  少女には、ここに来るまでの

 記憶が無い。

 自分が誰で、何故ここに居るのか。

 何故、重傷を負っているのか、

 何故、片手に拳銃を握っているのか、

 何故、髪の毛が緑色なのか、

 何故、半ズボンと一緒にタイツと

 ミリタリーブーツを履いているのか。

 

「……最悪のセンスだ」

  少女はそう呟くと、

 自身の声が男性のものであることに

 気づく。

 砂上で目覚めた際に確認した限りでは、

 自身は少女であったはず。

 しかし、考えを巡らせる頭の中では

 確かに性自認は男であった。

 謎は深まるばかりだ。

 

  もっとも、

 そういった、いくつかの謎や

 怪我の痛みは、

 彼女(彼?)にとっては

 どうでも良かった。

 焦燥と、いくらかの使命感も

 感じてはいたが、

 理由を覚えていないし、

 今はどうでも良い。

 

 少女は、ただひたすらに空腹だった。

 

  ここは、見たところ街の外れ

 海辺の砂浜だ。

 海を背にすると

 防波堤の上にビル群が頭を覗かせている。

 ここからでも聞こえるほどに

 何やら街の方が騒がしい。

 祭りでもやっているのかもしれない。

 

  祭り。

  甘美な響きだ。

  ヤキソバ、タコ焼き、牛串

 お好み焼き、わたあめ、りんご飴……

 

  空腹に突き動かされ

 少女は街の中心へ向かった。

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