おじいちゃんのラジオ
OBAR
終戦記念日に地方でよく聞く話
これは僕がまだ小学校に入る前に田舎のおじいちゃんの家にお盆で帰省した時のお話です。
おじいちゃんの家は北関東の農家で、母屋の他に小さな離れがあった。
その離れはその昔おじいちゃん達が住んでいたそうだが、今では使わなくなった家具やテレビなどが置いてあり、いわゆる物置として使っていた。
僕は『探検』と称しその離れで色々なモノを物色していたのだ。
そして、その探検中にソレは見つかった。
四角い箱状で黒くて重いソレは1メートル程のコードとプラグが付いており、電化製品であることは幼い僕にも解った。
妙に興味を惹かれた僕はソレを持ちおじいちゃんのところに行き訊ねた。
「おじいちゃんコレなぁに?」
「おぉ、こりゃ随分と骨董品を持ち出してきたなぁ〜」
「こっとうひん?」
「そうだとも、これはおじいちゃんが子供の頃に使っていたラジオだよ」
「らじお?」
「おや、ラジオを知らないかい? ラジオっていうのは声だけの放送を聴く機械だよ」
僕は見たことがなかった機械に心を踊らせながらおじいちゃんに訊ねた。
「コレってまだ動くの?」
「どうだっけかなぁ~? 古くなったから使わなくなって離れに突っ込んでおいたやつだからなぁ〜」
そういうとおじいちゃんはコンセントにプラグを挿した。
(ザーーーガガガッ ザーー)
「一応、電気は通るようだが……」
おじいちゃんはそう呟くと丸い部品を回していたが、結局その時はラジオを聴くことは出来なかった。
「おじいちゃん! コレもらっていい?」
僕がそういうとおじいちゃんは笑いながら
「随分と気に入ったもんだ。 構わんよ」
孫にねだられて気を良くしたおじいちゃんは二つ返事で了承したのだった。
◇◇◇◇◇
その日の夜、僕は布団に入ってからもなかなか寝つけずにいた。
昼間のラジオのことが気になっていたからだ。
僕は枕元に置いていたラジオのプラグを近くのコンセントヘ挿し、おじいちゃんがやっていたように丸い部品を回して放送を聴こうと試みた。
(ザーーーーーッ ガガッ ザーーッ)
うーん……だめなのかなぁ?
(ザーーー……××××)
エッ!? 今、なにか聴こえたような……
(ザーーー……×××……×××××……ザーーーー)
なにか話し声のような……
(……あつい……たすけて……ザーーーー)
!!!?!
僕は反射的にコンセントからプラグを引き抜いた。
そして一目散におじいちゃんのもとへ……。
「おいおい、どうしたんだ! そんなに慌てて」
「……。」
僕は何も言葉に出来ずに震えながらしがみついた。
◆◆◆◆◆
あとからおじいちゃんに聞いたのだが……
その昔、この辺りは東京ヘ空襲に行く米軍の爆撃機が上空を通過しており、撃墜するための高射砲が設置されていたらしい。
通常、高射砲の射程よりも高い位置を飛んでいた爆撃機が一度だけ低空飛行したときに撃墜されたそうだ。
その時に近くの民家に墜ちて激しく燃えたらしい。
あの時に聞いた『声』がその時の被害者のものかは分からないが、とても恐ろしい『声』だったのは今でも憶えている。
了。
おじいちゃんのラジオ OBAR @aikotoba-ailand1020304
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