悪のシタッパ戦闘員
秋丘光
悪のシタッパ戦闘員
どうも、悪の組織の戦闘員をやっています。
戦闘員といえば少しは格好がついていますが、要は下っ端です。
私の主な仕事は怪人にひっついて、ヒーローと戦うことです。戦うなんて大層な言い方をしていますが、要はちょっかいをだしているだけです。正直、私達なんていてもいなくても何ら変わらないと思います。
それでも私達、下っ端戦闘員は必死に戦います。そりゃもう命がけで。
ヒーローにとって雑魚であったとしても敵には変わりないですからね。ヒーローのくせに、奴ら結構簡単に私たちの命を奪っていきますからね。
一回の戦闘で、戦闘員の数人は殉職しますから。真面目な話。
もちろん、下っ端の戦闘員なんて早く辞めたいですよ。
でもね、ほら。想像するの簡単でしょ?悪の組織なんだから辞めようとして無事に済むわけないじゃないですか。
せめて、研究班とか事務職に移れればいいんですけどね。それも無理なわけですよ。大学には進学してないし、高校もまともに授業を受けてない。つまりは学がないわけでして…。
何よりあいつら死なないし欠員が出ないんだから…。それに比べてうちの殉職率ときたら…。ほぼ100%ですから。
要は下っ端戦闘員から移動なんてほぼ不可能ってこと。
移動がほぼ不可能ってなると、下っ端戦闘員から抜け出すには昇格・昇給ってなりますよね。私もそう考えてました。新人2,3年目くらいまではね。
よく考えてください。下っ端戦闘員から昇格しても戦闘員リーダー。戦闘員のリーダーなんて待遇は少し良くなるだけで、威張れるくらいしか違いはありません。
問題はその次です。戦闘員リーダーから昇格すると、おめでとうございます。手術を受けてパワーアップ。怪人としてヒーローと引き続き戦います。
あれ?って思いませんでした。
要はずっとヒーローと命のやり取りをし続けないといけないんです。死と隣り合わせなことに代わりないわけですよ。
それに加えてですよ。私が戦闘員として戦ってきたなかで、ヒーローに勝ったのなんてゼロですよ。ゼロ。絶望的ですよ。
こんなのでやってられます?私はやってらんないです。なのに気付けば私も戦闘員5年目。下っ端戦闘員で一番の古株になってしまいました。
同期は全てあの世にいき。ある者は同じ戦闘員として、またある者は怪人として。
ってこんな愚痴を聞いてもらうために、貴方に話をしてるんじゃないんですよ。
え?見ず知らずの人にそんなこと話しても大丈夫なのかって。そりゃ大丈夫なわけないですよ。でもどうせ酔っ払いの戯言って貴方も思ってるんでしょ。それに忘れるまで飲んじゃえばノープロブレム。ですから。
で、話を戻しますよ。私ね、諦めてないんですよ。戦闘員を辞めて悪の組織を抜け出すの。
いくつか案を話すので、適当にアドバンス、お願いしますね。
まずひとつめ。他部署に移動する。
え、さっき不可能っていったじゃないかって。酔ってるんですか。ちゃんと話を思い出してください。私は“ほぼ”不可能っていったんです、“ほぼ”って。つまり完全に無理ってわけじゃないんです。
噂ではいるみたいなんですよ。他部署に移動した人が。1人か2人ぐらい。めちゃくちゃ勉強したり資格取ったり研究実績だしたりって色々しなくちゃいけなくて、大変みたいですけど。
要は知力を上げれば、これが可能かもしれないってことですよ。
え?悪の組織から抜け出せないって。あのね、悪とか正義とか時代や人で変化する価値観みたいなのは、ホントはどーでもいいの。
私は、命の危険がある今の下っ端戦闘員って状況から逃げたいわけなの。
次にふたつめ。ヒーローに助けてもらう。
よくよく考えてみれば、今の状況を一番救ってくれそうなのって敵であるはずのヒーローなんですよね。彼らと上手く関係を構築して仲良くなって事情を分かって貰えれば助けてくれると思うんですよ。
要は好感度を上げれば、救いの手が差し伸べられるってわけですよ。
え?仲間を裏切ることになるって。あのね、仲間の命を顧みない奴らを信じ裏切らずに戦うことが、私の幸せになるって本当に思ってます?
道徳よりも何よりも命の危険にあふれてる状況から逃げたいの。
みっつめ。ヒーローを抹殺する。
これもよくよく考えてください。私の命を奪う危険が一番あるのって敵であるヒーローなんですよね。つまり昇格して出世して、強くなってヒーローっていう危険人物を排除するのが一番手っ取り早いんですよ。
要は評価が上がれば、出世して強くなるってヒーローを倒せる確率が上がるあけですよ。
え?さっきと話が真逆?何より殉職の可能性が高すぎるって…。あのね、そんなこと私が一番分かってますよ。でもあくまでこれもひとつ可能性として挙げたすぎません。
死なないことよりも命の危険を…。ってあれ?なんか可笑しいな。私もだいぶ酔いが回ってきたみたいです。
最後によっつめ。やられた仲間のパーツを集めて自分を強化する。
基本的に私って仲間の最期のときに一緒にいることが多いんですよ。で、悲しいことに悪の組織もヒーローも、やられた仲間のことなんてほったらかしなんですよ。
だから仲間のパーツが、仲間だった残骸がね、辺りに散らばってるんですよ…。
最初は純粋な気持ちで集めていたんですけど、巨大ハサミや
でも私を手術できる仲間がいない。
要はパーツを集め仲間たちの信頼度を上げれば、仲間たちもみんな助かるかもしれない。
とにかくやり遂げてみせますよ。
半年以内に下っ端戦闘員を辞めて、悪の組織から抜け出し、命の危険のある状況から逃げ出してみせます。
悪のシタッパ戦闘員 秋丘光 @akinokisetu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます