5.5-8 またこんど
〝一人になっても生き延びるんだ〟
耳の奥で、母様の声が弾ける。
パチンと音を立てて、シェンは檻の中に戻ってきた。
ふん、ふん、と生臭い息が顔に――
――息がかかるほど、獣が近くにいる!
「あ……ぁ」
シェンの口から声が漏れた。その瞬間、ぶわっ! と獣のたてがみが逆立って、シェンの視界を埋め尽くす。
ヴ、ヴ、ヴ、と唸ったのも束の間、獣は大口を開けてかぶりついてきた。
黄色い牙から、唾液が糸を引いている。
どす黒いヒルのような舌が迫ってくる。それを跳ねのけようと、シェンはとっさに左腕を突き出していた。
い"………
「ぃギヤアァアあぁぁぁァアぁあ‼︎」
左肘関節のすぐ下に、ぬめぬめした牙がずぶりと、焦らすようにゆっくり食い込んでいく。
起こること全部がゆっくりに感じた。牙の下から鮮血が流れ出して腕をつたい、肘の先をくすぐる。
妙に周りがしんとしているのに気がついて、初めてさっきの絶叫が自分の口から出たものだと理解した。
そして同時に、自分の右手が懐から双節棍を取り出しているのにも気がついた。無意識に得物を手に取っている自分の反射神経に、他人事のようにありがたみすら感じた。
「こンのぉぉおオォォォッ!」
握っていた双節棍の棒部を振り上げ、シェンの腕に牙が刺さって動けない獣の、黄色い目玉めがけてめちゃくちゃに殴りかかった。
獣の腰が一瞬引ける。目の前にあった獣の耳に思い切り齧りつくと、犬歯をつき立てて噛みちぎる。
ギャン! と声をあげて、腕から牙が抜けた。その瞬間焼けるような熱が傷口へ走り、頭の中はさらにめちゃくちゃになる。
抵抗しようと必死に暴れる獣の牙を蹴飛ばして、血で濡れた獣の額にしがみつき、体の向きを変えて鼻先に歯をねじ込む。ぶちゅ、と柔らかい音を立てて、口の中に生臭い泥のような血液が広がる。
自分の鋭い犬歯が獣の肉の筋をブチブチちぎるたびに、自分が生き残れる可能性が確かになるようですごく気持ちがよかった。
獣がヒィヒィ泣いている。ざまあみろ。生き残るのは私だ。死ね。さっさと死ね。いいからさっさと死ね。殺せなかった方が殺されるのだ。ざまあみろ。ざまあみろ。ざまあみろ。ざまあみろ。ざまあみろ――
ガンっ!
突然頭と右肩に衝撃が走った。目を瞑る。
「ぎっ……」
引きずるように体を起こして、自分が横倒しになっていたことに気がつく。
目を開けると、すぐそばに獣の体が倒れて、ビクビク震えている。獣が倒れたから、そこにしがみついていたシェンの体が床に叩きつけられたらしい。
シェンはのっそりと立ち上がった。心臓が喉から飛び出そうだ。わんわんと耳の中で鳴っている雑音は――歓声? だろうか?
そうだ。
これは見世物なんじゃなかったか?
シェンはとっさに、真っ赤な右手を歓声のする方へ大きく振った。いっそう雑音は大きくなる。頭が割れそうだ。
そう思った時、ちょうどよく檻の前に天幕が降りた。
観客からの視線が、茶色い布に遮られる。ふっ、とうるさい雑音が遠のく。
「パルマ、終わったぜ。出てこいよ」
上からロジーの声が降ってきた。
同時に、黄色い綱が目の前に下りてくる。シェンは飛びつくように右手と両足でそれを掴み、体を委ねた。
下を見ると、地獄のような血の池が広がっている。
そのほとりに、痩せたオオカミの、灰色の下半身。上半身は赤黒い血を吸った毛皮、ところどころそれすら毟り取られて黒っぽい皮膚が見える。顔に至っては目も鼻も耳も黒い穴と化し、そこからどくどくと血が湧き出していた。
いつのまにかシェンが持っていた双節棍は、柄が二本とも獣の口にねじ込まれていて、そこで錆色に光っていた。知らない間に獣の喉の奥に押し込んだらしく、顎がだらしなく外れて変形している。
「よくやったじゃん、パルマ。俺でもあんなにお客沸かせたことないぜ」
顔を上げると、ロジーの嬉しそうな表情が目に映った。
ロジーがシェンの手からそっと綱を取る。シェンはびくりとして足元を見た。シェンは、檻の鉄格子の上に立っていた。
足元の格子の向こうに、無残な姿になった獣の死骸が見える。
勝った。
生き残った。
生き残ったんだ。
**********
シェンは子供たちの家にいた。
獣と殺し合っている最中のことを、ずっと頭の中で繰り返す。まるで、一秒が何時間にも引き伸ばされたように。
どうしてあんなめちゃくちゃな戦い方をしたんだろう。ロジーが、慣れればもう少しちゃんと戦えるって言っていたけど、そんなものなんだろうか。ロジーもあんな風だったのだろうか。
左腕に包丁でも刺されたような痛み。
シェンは食堂奥の土間に降りる段差に腰かけていて、ハオじいがシェンの左腕にできた獣の咬み傷を水で洗っていた。彼はその横にハオじいが洗い古した布や擦った薬草、水を汲んだ桶を広げていた。
「傷が骨まで届いてル。多分だガ」
ハオじいが下手くそなアルバート語でつぶやくのを聞きながら、シェンは痛みに喉まで迫り上がってくる悲鳴をかき殺す。
「しばらくはこのままにしておケ。舞台はロジーにやらせロ。お前は怪我が治るまで稽古はなしダ、ロジーにはそう言っておク」
言いながら、ハオじいはシェンの肘を軽く曲げて布できつく縛る。
「ロジーも最初はこうだっタ。奴も怪我は大事をとって治セと言うはずダ」
布を結んで留めて、広げた薬草をくるくると手早く片付ける。
「……分かりました」
シェンはエン国語で小さく返した。
「どれくらいで治りますか」
「……お前の回復が奇跡的に早くてもひと月だ」
ハオじいは眉間に皺を寄せながら、暗い手元を睨んでエン国語で答えた。シェンは腰掛けていた段差からぴょん、と飛び降りる。
「すみません、お手を取らせて。夕飯の仕込みを――」
「しばらく腕はそのままにしておけと言っただろう。今日からしばらく飯の仕込みはしなくていい。屋敷の雑用にも行くなとは言わん、できるだけ体を動かすのは控えろ。傷を濡らさないように水浴びして、飯を食ったら早く休め。お前は今、治すことが仕事だ」
上品な口ぶりで嗜められ、シェンは口をつぐむ。
お礼だけ言って、勝手口から外に出た。日が傾き始めている。他の子供たちは、まだショーの片付けから帰ってこない。
シェンは家の裏に回り、壁際に置いてある大きな水瓶までふらふら歩く。元の色がわからないほど血で染まった服を右手だけでやっと脱ぎ捨て、そばにあった桶を取って水浴びをした。
裸のまま服を洗う。
着替えを用意するのを忘れた。獣の血は粘っこくてなかなか落ちない。
ハオじいに塩をもらって、それをつけてこすりまくって、ようやく大体元の色に戻った頃には、日が暮れていた。寒くて歯がガタガタ鳴った。
わざわざ心配して見にきてくれたエブリンが、芋とチーズを分けてくれた。口の中にこびりついた獣の血の味のせいで、ものすごくマズい。
裏手に生えていた木の枝へ衣装を引っ掛けて干し、みんなが水浴びしに来る前に、一人寝室へ駆け込んだ。朝着ていた服を見つけると、それを着て部屋の隅にうずくまる。
誰の顔も見たくなかった。左腕が熱い。動かすたび、指先から肩までずきっと痛む。
どれだけ時間が経ったろう。やがてみんなが寝室に戻ってきた。
いつものように寝る準備をしながら、たまにシェンに声をかける者もいる。でも、しばらくしたら一人また一人と寝付いて静かになっていった。
灯りの落ちた部屋の隅は、しんしんと夜がふける音さえ聞こえてくるようだった。
シェンはまんじりともせず、腕の痛みとだけ向き合ったまま、ずっと寝たふりをしていた。
**********
次の日の昼。
シェンは劇場小屋の裏で、年下の子供たちの舞台衣装を繕ってやっていた。
「パルマ、その怪我いつ直るの?」
女の子が一人、シェンが衣装を繕うのを立ったまま待ちながら、おずおずと尋ねてきた。
シェンは針を口に咥えていたので、聞こえないふりで黙っていた。
「……怪我がずっと治らなかったら、よその町に売られちゃうんだって、エンリィが言ってた。パルマ……」
シェンはぺっと針を吐き出して、
「こんなの十日もあれば治りまス」
ぶっきらぼうに返すと、乱暴に歯で糸を噛み切り、繕い終わった衣装を女の子に押し付けた。
「う、うん」
女の子は面食らったようにその場で足先をもじもじさせた。
「ほんと?」
「ほんとでス。ハオじいがそう言ってましタ。次」
シェンは女の子の顔を見もせず、その後ろで待っている男の子に手を伸ばした。彼が差し出してきた舞台衣装を、奪うように取って地面に広げる。
知りたくもないことを知ってしまった。彼女はシェンを心配しているだけなのだろう。でもそんなことを言われたら、おちおちまともに治していられない。
だからチビは嫌いなんだ。相手を心配する気持ちと、自分の不安を晴らしたい欲求の区別もついていない。無邪気がゆえに偽善たらしくてムカムカする。
「はい、次」
衣装を男の子に返し、また次の子供から衣装を受け取る。
さっきの女の子はシェンの返事を聞いてほっとしたのか、劇場小屋から離れたところで、もう他の子とじゃれては笑っていた。
誰も信じたくないだろう――使い物にならなくなったら本当によそへ売られてしまうかも知れないなんて。ちょっとしたことで使い物にならなくなる状況に、自分が置かれているなんて。
みなしごを匿う場所としては、とても幸せなところだとみんなが思っている。自分だって思っていた――初舞台を踏むまでは。
使えない子供は食わせてもらえない。子供は捨てたら戻ってくる。だから売られて当然だと思う。でも、いらない子供の売り先なんて、今より良いところなわけがない。
じゃあ逃げようか? でも、逃げたらまたしばらくは森の中で獣の生活だ。それじゃダメなんだ。それじゃいつ大人になったかわからない。
シェンの気持ちは、地面の下に溺れていった。
せっかく、しばらく考えずに済んでいたことだったのに。ぼんやりと何もかも忘れられそうだったのに。
ここなら大人になれるから、それでいいと思っていた。それなのに全部戻ってきた。一年以上前に手を切れたはずの答えのない問いが、また戻ってきた。全部振り出し――初舞台の日から、事あるごとに同じことばかり考えている。〝一人になっても生き延びるんだ〟の声は、やっと少し遠のいたと思っていたのに、今度は前よりうるさい。
「はい、終わり」
全員の服を繕い終わった。
子供たちは、残っていた者から口々に「ありがとう」とこちらに声をかけながら、嬉しそうに散っていく。
シェンは針と糸を端切れに刺して片付けると、子供たちを睨むように見た。
こいつらのせいで、十日で治さなければならなくなってしまった。何にも知らずに、ゲラゲラと笑いやがって。
**********
「最低ひと月は休むように」と言ったハオじいと、「十日で治る」というシェンのいいかげんな嘘を鵜呑みにした子供たち――ロジーがどっちの言葉を信じるか、シェンには嘘をついた時からわかっていた。
「パルマ、十日で治るんだってな!? パルマはすごいよ、オレなんか同じくらいやらかした時はふた月かかったってのに!」
目をキラキラさせながら、ロジーは身を乗り出すように言った。
ハオじいはロジーに本当のことを言わなかったのか、そんなはずは……と、シェンはそれ以上考えないことにした。
「……
眩しいほどちかちか瞬くロジーの瞳を見て、にっこりと笑っておく。ロジーは嬉しそうに一言二言なにか返して、去っていった。
次の見世物はちょうど十日後。
結局、シェンはそこで二回目の舞台を踏むことになった。
考えてみればこれくらいの怪我、これから無数にするだろうから、今のうちに慣れておくほかあるまい。平気、平気、と思い込むのは案外簡単だった。
シェンの初舞台はよほど刺激的だったのだろう、お客は前より目に見えてたくさん入っていた。
初舞台でやり合った獣は、本当にロジーのとっておきだったらしい。次のショーのために残っている獣は、年老いて小さくなった猪だったり、病気っぽいイタチだったり、どれも最初のよりは見栄えがしない。
狼の次に大きい獣――なんだったか忘れたけれど、それとやり合った。
それ以降、猛獣使いの見世物に出るのは、もっぱらシェンの仕事になってしまった。
檻の中にいる時はやはり頭が真っ白で、いつも気がついたら子供たちの家にいる。
他の子供たちの話からすると、いつもショーが終わったらみんなと一緒に客を見送り、「帰っていい」とロジーに言われるまでほどほどに片付けを手伝っているらしい。その辺りの記憶はすべて、夢のようにふわふわしている。
でも、檻の中での戦い方がだんだん上達している手応えはあった。双節棍の鉄の棒部を、向かってくる獣の牙の間にねじ込む。獣の動きが一瞬止まった隙に、足の間に滑り込んで腹や股の急所を食いちぎる。
いのししや猿はともかく、牙をむいて向かってくる肉食獣は、大抵これでやり過ごせた。そのせいで、ショーの後はいつも口の中がまずくてまずくて仕方ない。
おかげで、夕食の仕込みの腕が上がった。臭い獣の血の味を誤魔化したくて、以前より味付けが濃くなったような気はしていたが、ハオじいは何も言わなかった。
そして、ロジーはそんなシェンを、すっかり師匠づらで嬉しそうに見ていた。
**********
「う、うわぁぁぁん! パルマぁ! パルマぁぁ!」
女の子の泣き声が、眠っているシェンの耳をつんざく。
「パルマおきてえぇ! どおしよぉぉぉ」
目を開けると、寝室はまだ真っ暗だった。他の子の汗でじんわり暑い寝床から、重い体を起こす。
「なんですカ」
もぞもぞ動く子供たちのかたまりをひょいっと飛び越して、シェンは声の主を探した。
寝室の入り口の前に、小さな人影。窓からわずかに差す星灯りで、痩せた女の子の輪郭が銀色に浮き上がっていた。
「ロジーがぁあ」
シェンは泣き叫ぶ影の横にあぐらをかくと、その腕を引っ張って、自分の膝の上に座らせる。少しだけ泣き声が静かになった。
寝室の真ん中で固まって寝ている子供たちの方から、ェ……ナニ……ナンノコエ……とぶつぶつ声がいくつも聞こえてきた。
「ロジーが、なんでス?」
シェンが尋ねると、女の子はまた大声で泣き出した。
「しぃっ」
後ろからきつく抱きしめて黙らせる。ひっ……ひっ……としゃくり上げる声が完全に静かになるまで、体を揺らしてやりながらじっと待つ。
泣き声で目を覚ました他の子供たちが再び寝息をたて始めた頃、シェンはもう一度、やさしく尋ねた。
「ロジーが、なんですっテ?」
「ロジーが……ひっ……ロジーが、どっか行っちゃった」
えっ、という声が漏れるのを、シェンはすんでのところで飲み込んだ。
暗がりに目を凝らして、寝室を端から端まで見る。たしかに、いつも端の方で寝ているロジーたち三人の影は見当たらない。
「お手洗にいったのかもしれませン」
「んーん……エブリンも、シャモアも一緒にいっちゃった」
女の子がシェンの腕で鼻水を拭いた。
シェンは黙っていた。言葉が出てこない。
「あのね、あの……パルマの言うことよく聞いてって、ロジーが、すぐ戻って来たいけど、いつかわからないって、で、でも行かなきゃ、行かなきゃいけないんだって、言って、それで、」
女の子の目にみるみる涙が溜まっていくのは、後ろ姿からでもわかった。
「それで、三人で行っちゃった、いつ、いつかえってくる? かえってくる? ねえ、」
ねえ、ねえ、と、女の子が繰り返す。
その前の言葉を飲み込めなくて、シェンの脳みそは溺れる虫のようにじたばた暴れていた。
行かなきゃいけないって、なんだ?
どこへ? なんのために? この一座を、ほっぽいて……
〝じゃあ逃げようか〟
この間、自分で思ったことが、ふと頭に浮かんだ。
なぁんだ、そんなことか。と、シェンは思った。
それと同時に、さっきまで頭の中をぐるぐる回っていた疑問とか、ふつふつ沸き始めていた怒りとかそういうものが、重い諦めに押し流されて、取り返しのつかない海の底にどろどろ沈んでいく感覚がした。
心の中が、まっさらに凪いでいく。
なんにも、なんにもない。
「パルマぁ」
ただしかし、この子の言うことが本当なのだとしたら、大変なことになった。
パルマの言うことをよく聞いて、と、言ったのか、本当に? それは、ロジーが出て行った後の役目をシェンに任せるということなのか?
「パルマぁぁ」
いつかえってくる? そんなこと私が知りたい。帰ってくる気があるのかど――
「パルマぁ、痛いぃ」
がばっ! と、シェンは女の子を放した。いつの間にか、女の子をぎちぎちに締め上げていたらしい。
「す、すみませン」
謝ると、女の子はこちらを見て、目に溜めた涙をぼろぼろこぼした。シェンの膝の上で、そのままくしゃくしゃと小さくうずくまって泣きじゃくる。
こっちを責めもせずひたすら悲しむその姿は、自分がいかに非力でかわいそうな子供か、全身で主張していた。
「シャーサ、パルマが悪かったでス。今日はパルマがここにいますかラ。もう一回寝ましょウ」
「でも、ロジー、探しにいく」
女の子、シャーサは震える声で答えた。
「でも、ロジーはすぐ戻ってくるって言ったんでしょウ?」
「でも、いっちゃったよ、いつ、帰ってくるの、エブリンも、」
「またこんど、帰ってきまス」
シェンはシャーサの声をかき消すように言った。
「大きな街のほうに、用足しに行ったんでしょウ。ちょっと待ったら、かえって来まス。ね。パルマは――パルマはそうロジーたちに聞いてますヨ」
そう言うと、シェンは立ち上がった。問答無用でシャーサを抱き上げると、集まって寝ている子供達の群れの一番外側に、その小さな体を押し付ける。
そして、その隣に自分も寝転んで、シャーサに後ろからくっついた。
「こんどって、いつ?」
サーシャが振り返る。シェンの言葉を聞いて、すんなり涙は引っ込んでいた。
シェンは微笑を浮かべて、
「こんどはこんどでス。待ってればすぐに」
「どこに行ったの?」
「王都でス。王都には、なんでもあるんですヨ」
「なんで、みんなで行かないの?」
「王都までは、とっても危ないからですヨ。獣も、お化けも、たくさんいますかラ……」
「ロジーたちとパルマがいたら大丈夫だよ」
「……寝ましょウ、シャーサ。いい子にしてたら、ロジーたちは帰ってきまス」
そう言って、シェンは振り返っているシャーサの頭を戻した。うん、とか細い声が返ってくる。
シャーサの体を後ろから抱いて、腹のあたりをトン、トン、と叩いていると、しばらくしたらシャーサは寝息を立て始めた。
それとは反対に、シェンは到底寝るどころではなかった。
明日から、一体どうすればいいんだ。
**********
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