第11話 Sexual Therapy

 乃蒼はエイリアンに「性的な接触」をされて悶えていた。

エイリアンは乃蒼の人格的な障害の「治療」という名目で、乃蒼を玩弄して陰密な快感を得ているのだった。

 性的な欲望や快楽が、低級でプリミティヴな衝動に基づくもの、とはもちろん限らなくて、だいたい人類のセックスの様相は動物ほど単純でないのに、「ケダモノの衝動」「ケダモノの行為」などと呼ぶのは、 不可思議な矛盾というか、羞恥とか禁忌の発露に過ぎず、セックスの逸楽とか官能は詩的、芸術的に昇華しうる、本来極めて高級でサピエントなものに違いないのだ。

 

 ヒューマノイドのエイリアンにとって、乃蒼の肉体は十分に魅力的で、個性的なるがゆえの精神的なcharmness もE・Tを満足させ得る水準だった。人格的な接触によって得られる愛情の交歓というのもセックスの重要な要素で、つまりそのいわば超越的な全人格的なコミュニケーションがエイリアンの精神的な「治療、癒し」の本態、中心的な方法論なのだった。


 信頼して身も心も委ねて、他の人格と合一する。その体験を重ねることで「こころ」が癒されて成長していくというのがエイリアンの超文明においてもやはり治療のイロハ、不変の真理なのだ。精神の病はつまり人間関係の病であって、愛や性が人間関係の質を変容することですべてが変わっていくのだ。

 

 E・Tは、全裸で横たわって、「Hmmmmm…💓」と息を乱して喘いでいる乃蒼を愛撫していた。敏感な部位を、繊細な指先で優しく、刷毛でなぞるように、微妙に刺激していく。乃蒼の意識内に様々な観念や言葉が去来するのを、逐一知悉しているE・Tは、時にそれを意地悪い調子で繰り返して、揶揄する。そうして無防備にさらけ出されているという感覚を乃蒼に与えて、観念によるSMプレイの昂奮を与え合うのだ…

 

 E・Tの宇宙船の中でE・Tの実験人形にされてもてあそばれている…傍目にはそう見えるかもしれない…乃蒼にもそれはわかっていたが、既にE・Tと乃蒼の間には深い精神的な絆ができていて、実際セラピーは成功しているのだった。乃蒼は健康で円満な人格になり、洞察力や発想力、その他のサイキックな能力の著しい増大すら発現した。

 E・Tとの触れ合いで、乃蒼のような 超人類が地球には増えつつあるのかもしれない。

 だが、そこまでは今の乃蒼には伺い知れない、何か”神秘的な領域”なのであった…   


<続く

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