第12話 超・品種改良のノウハウ

 E・Tとの交流で、”超人類”への進化を遂げた如月乃蒼は、懸案の、「スーパー高麗人参」のグレードアップ、品種改良に日々勤しんでいた。

 品種改良というのは、一般的には優良な形質の個体同士の交配、あるいは、突然変異体の出現を出来しやすい環境を整えて、よりエクセレントな種としての「進化」を人工的にいわば「捏造」する作業だ。

 植物学者であるE・Tの、品種改良のノウハウは、地球のそれとは趣を異にしていて、突然変異という、普通はランダムにしか発生しない自然現象を、完全にあらかじめデザインして「人工的に」発生させる、というものだった。

 

 技術者としての乃蒼は、高麗人参という類稀たぐいまれなスーパーハーブを、さらに野菜の中の野菜、野菜というもののメリットを極め尽くした”神食材”にすることを目指していた。 

 高麗人参を研究し尽くしている開発スタッフは、あとはどういう突然変異が生じれば、奇跡の万能の霊薬、全ての病を癒し、不老不死すら不可能でなくする「スーパー高麗人参」の栽培が可能になるかを figure out していた。


 これこそが、「野田青果店」をGAFA並みのスーパー企業にして、究極の救済を人類にもたらす、最後の切り札だったのだ!

 

 E・Tの超文明には存在しない高麗人参というスーパーハーブをしかし、E・Tのノウハウで、”超・品種改良”することは可能だった。

 不老不死の霊薬が存在するという、「蓬莱国」を目指して日本を訪れた古代中国の徐福という使者のように、E・Tの嗅覚は的確で、野田農園に白羽の矢を立てたのも、乃蒼を選んだのも予定調和のような必然となっていた。

 

 E・Tは、乃蒼とともにスーパー高麗人参の開発の最後のプロセスに挑んでいた。

 高麗人参固有の驚異の生命力と、ミステリアスな人体への癒しのパワー、そこには複雑な要因が絡み合っていて、膨大な数の化学式や数式でその究極的な秘密を解析しようとしても、容易に最終的な解答には辿り着けなかった。

 それがこれまでの経過だったが、そこに<E・Tの超テクノロジー>という未知数のファクターが加味されることで、恰も不可知の難題、例えばフェルマーの大定理の証明が不意に成就するかのような「奇跡」が出来したのである。

 乃蒼たちの研究チームは高麗人参の薬効をもたらす上での中心的な成分であるジンセノサイドの化学式を多少アレンジすることでメタジンセノサイドという物質が作成することに成功していた。

 それが「夢の新物質」なのであった。 

 強壮効果や強精効果、全ての生活習慣病の症状を改善する効果、全ての効能が劇的に増大していたが、それプラス、がん細胞のアポトーシスを強力に促す特長があった!

 実験上では丸山ワクチンやインターフェロン等のがんを消滅させる効果の、一万倍を超えるほどのドラスティックなエビデンスを示している、文字通り「奇跡の薬」なのであった。

   

 <続く

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