第9話 E・Tのハイテク

 如月乃蒼は、従来からなんとなくテクノロジーというものになんとはなしの”違和感”を抱いていた。自分自身が研究者で、サイエンスの方法論に基づいて実験や開発を日常的にやってはいるのだが、世界を動かしている中心的な最先端のテクノロジーの進化形態には、ブラックボックスというのか、感覚的に理解がむつかしいような、何だかミッシングリンクという話に似たような不可思議な違和感がある。

 つまり、いつのまにかグーグルアースというような超技術が汎用化されていたり、スーパーコンピューターやスマートフォン、自動運転の自動車、ロボット技術、ナノサイエンス、そうした最先端のテクノロジーのイノベーションには、ノウハウの積み重ねを超えた、何らかの未知の要素が介在している?というような、そうした漠然とした直観があった。

 そうして、乃蒼の元を訪れたE・Tの話を聞くにつれて、そういう「違和感」は故無きものではなくて、要するにすべて表沙汰にできないE・Tの介在によって、未知の超技術がどんどん現実化していっている…そういうことが真相であると、だんだん乃蒼にも合点がいってきたのだ。

 「銀河系には三つの超文明があって、お互いに拮抗して、せめぎ合っています。戦争状態ではないですが、存在形態がそれぞれに異質なので、独自の進化を遂げていて、まじりあうのは不可能なのです。

 精神だけという存在が棲息している、精神文明の発達した星というか空域もあります。あなたがたの Brain の進化水準ではまだ理解できない、複雑で抽象性の高い、文化や文明、技術、宗教、芸術、超能力その他の無数の生命の構成要素が、この宇宙には満ち満ちています。

  地球上でも意識の高いスピリチュアリストがだんだんに寧ろ楽天的に、能天気に思えるほどに「明るい」ポジティブな発想をし始めるのは、地球文明の狭い枠にとらわれない、この世界、大宇宙にはもっと遥かに肥沃で潤沢な発想や要素が無限大に存在している…そういうイメージが幻視出来る様になるからでしょう。実際そうなのです。宇宙は広くて、ファンタスティックです。どうかもっと心を開いていかにこの世界が豊饒なパラダイスであるかを知ってほしいのです…」


 E・Tのテレパシーの無音のナレーションは、極めて静謐に、驚くべき「真実」を解き明かしていくのだった。

 乃蒼には映画の「E・T」や「未知との遭遇」を遥かに凌駕しさえするような、深い感動を覚え始めていた…


<続く>

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