第8話 野菜はなぜ体にいいか

 『「野菜は積極的に摂取すべきだ」と、よく言われるし、野菜や果物は、スーパーに入ると真っ先に陳列してある食材で、鮮やかな色合いで四季折々に目にも楽しい。

 だが、なぜ野菜が健康の維持に効果的かというと、中途半端な知識しかない人が多いのではないか?

 五大栄養素をバランスよく摂取することが肝要なのはもちろんだが、野菜を食べることのメリットは、不足しがちで、体の調子を整えるビタミンやミネラルが豊富なところである。加えて食物繊維とカリウムもふんだんに含有されていて、血管や腸の健康にいい。それプラス個々の野菜には固有の栄養素のメリットがあって、ブロッコリーだと抗がん作用、ネギや玉ねぎにはアリシンの血液さらさら効果、ジャガイモならビタミンC,人参ならビタミンA、E。キャベツならビタミンU。こういう風にそれぞれの野菜に千差万別の薬効があるので、バラエティに富んだ野菜を摂取するのにもメリットが多いのだ。

 炭水化物やたんぱく質が主な構成要素の、他の食材にはこうした個性的な、百花繚乱、千差万別ともいえる栄養素、健康効果の多様性は普通存在せず、その意味でも野菜という食材にはかなり奥の深い含蓄というか、研究に値する対象としての試用や応用の余地に富んでいると言える。

 … …』


 日菜子は、月刊の野田青果店の広報誌、「野菜ちゃん通信」用の原稿を綴っていた。これは、「野菜をもっと食べよう」キャンペーンの一環のコラムに載せるエッセーなのだが、何も調べずに一気呵成に思いつくまま書き飛ばしたので、薄味になってしまった。

 また、ネットで調べなおして、推敲その他して、加筆訂正することにしよう…


 日菜子のことを「野菜の伝道師」、「野菜の天使」とか、世間では呼んでいるが、まだまだ生半可で、勉強不足を痛感している。

 しかし確かに植物には野菜、果物、キノコ、五穀、海草などがあって、本当に種々様々で、汲めども尽きせぬ味わいがあるなあ、と思う。

 一生の伴侶として、植物を選ぶことになったのは日菜子の決断だが、そこについての後悔はおろか、一分一厘の迷いも、微塵もなかった。

 ベジタリアンの日菜子の頬はツヤツヤと光り輝くような感じで、プロポーションも理想的だった。

 西洋のことわざに You are what you eat. というのがあるが、「野菜で出来ている」日菜子の心身は健康そのもので、疲れを知らない弾むような元気のかたまり、という趣なのであった…


<続く>

 

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